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早馬より獣化を
イチャイチャしたせいで、宿を出るのが予定より遅くなってしまった。
宿を出た途端、昨日集まっていた人達が取り囲んだ。
「トルク様!うちの国の危機を救ってください!!」
「却下、自国の危機はまず自国で対処を!
国際問題になるなら検討の場を半年毎の国際会議に提出しろ!!
私は便利屋ではない!」
まろびつ飛び出して来たどこかの国の使者は、一刀両断されていた。
深くフードをかぶり、なるべくトルクにくっついて歩いていたのに、後ろからいきなり引き倒される様に引っ張られた。
「ぐっ!!」
よろけて、フードが捲れてしまうと、黒目黒髪の顔が晒された。
おお!!
神の子がいる!!
瞬く間に僕に触ろうとする者や、力任せに連れて行こうとする者で揉みくちゃにされた。
「や、トルク!!」
焦った僕はトルクに手を伸ばしてその手を掴んだ。
「咲季!
下がれ!愚か者どもが!!」
しっかり繋いだ手を引っ張り上げようとした時に、背中にドンという衝撃を受けた。
「あ、とる、く?」
「咲季!!?」
僕の後ろにいたのはアサルトとキリアスが、手にナイフを持って嗤っていた。
「豚風情が神の子など、片腹痛いわ!!」
「さきー!!!」
トルクの叫びが聞こえた。
抱きしめるトルクの綺麗な瞳から、大粒の涙が流れて長い睫毛を濡らした。
「ふふ、綺麗、ね」
「喋るな!いま、治癒をかける」
ジワジワと広がる血溜まりが異変を知らせていた。
「はっ!
このナイフには呪いがかかってるのさ
助かるもんか!!
言い様だな、宰相に神の子豚よ!」
アサルトと、キリアスは満足げにしていたが、汚い笑い顔のまま、首が二つ地面に落ちた。
ゴロゴロッ!
その首の持ち主からは鮮血が吹き出し、辺りに血の雨を降らせながら勢いよく倒れた。
避けられない血の雨に、悲鳴をあげる者や逃げ出す者で辺りは誰も近づかない空間が出来上がっていた。
「大丈夫、咲季、もう少し我慢してね
解呪するから。
呪いでよかったよ、毒だと難しかったから。」
「とるく、大丈夫
ぼく、頑張れるよ」
「うん、いい子だね」
解呪の魔法陣と治癒の魔法陣の二段がけを、同時にするために、少し時間がかかっていた。
あー、これまでかなぁ、神様、いきなり終わりそうです。
笑っていたと思うけど、息が細くなって来ていた。
その時、トルクが使うスキルの様に、灼けそうな程の光が現れた。
トルク、私に任せて。
咲季、君って子はさぁ、心配させないでよ。
次から死にそうな時は神の祝福をつかってよね!
うん、神様、ごめんなさい。
そう言う時はありがとうだよ、子豚ちゃん。
神よ、心から感謝する!
トルク、咲季をちゃんと守ってよ?
この子ボンヤリさんなんだから。
悩みすぎて一周回って優しくなっちゃう子だからさ。
え?僕、ボンヤリさんじゃないよ?
いや、ボンヤリさんだ。
二人して声を揃えないでよ、もう!
じゃあね、神の祝福って使えるだろ?って言いながら帰って行った。
「咲季、もう大丈夫だ。
あの方が神か。」
「うん、僕を転生してくれた人」
光が引いた後、僕の体はきれいに治っていた。
ワッと歓声が上がる。
「あ、ヤバいなこれ
取り敢えず逃げるぞ!
背中に乗って!!」
トルクは獣化して、真っ白な毛の中に銀に光る斑点を持つ白豹になった。
森にいた時の倍はあった。
「早く!」
「うん!」
跳んで跨った瞬間駆け出した。
物凄い速さで、景色が飛ぶってこう言う事なんだと実感できた。
その分、風圧キツい。
息できない。
ー風耐性を獲得しましたー
風耐性のおかげで、膜を作る様に対策が出来て息が出来る様になった。
早馬よりこっちの方が断然早くない?
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