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マナイの牙
「マナイ兄様!
もう、止めて!」
マナイがやろうとしてる事を察した。
「トアなんかと心中するな!
僕が許さないから!
マナイ兄様を許さない!
死んだりしたら、許さないから!」
このまま、何かのスキルを発動させようとしていた。
「ぐあっ!!」
マナイは肉片を引き千切り、ペッと捨てた。
「咲季ちゃん、そんなに泣かないで」
「泣くよ!
当たり前じゃん!」
マナイが居場所をまた無くしそうなんだ。
僕が拉致られたりしたから!
「マナイ兄様、今回の事はトルクでもフロウでも予測出来ていなかったんだよ?
マナイ兄様が責任を感じる事は無い。
それにね、僕が一番お手本にしてるのは、
マナイ兄様なんだから。
居てくれないと困る!
一番大事な事あった!
誰がうちの子達を叱れると思ってるの?
ね?分かるでしょ?
マナイ兄様は僕の家族なんだよ。
僕を抱きしめてよ、怖かったんだから」
「私は、咲季ちゃんを守りたい」
「うん、守って。」
僕はマナイに近づいて、サーベルタイガーの体に抱きついた。
「マナイ兄様、大好きだよ」
「咲季、ちゃん…
汚れるよ」
「ふふ、お風呂に入れば良いんだ。
ね、帰ろうよ」
「私は!」
「もう、終わったよ。
僕は無事だもん」
「私は、咲季ちゃんの側にいても?」
「当たり前だ!
マナイ兄様は賢いのに馬鹿じゃないの?!」
前の自信のないマナイになってるのは分かるけど、こんな奴の罪を背負う必要はないんだ。
悪いのはトアと、その父親。
「マナイ兄様は、ダリューンお父様の#息子__・__#でしょ!
このクズな狩の能力もメスを侍らず事もできない、クズライオンとは違うんですよ!
一滴だって血の繋がりなんかない!!」
「ごめん、ごめんなさい
咲季ちゃん、ごめん」
「もう、大丈夫だよ。」
僕はマナイを手に入れた。
「トア、貴様を神の裁きにて、裁く!」
トルクはマナイの気持ちが安定したのを確認して、トアの裁きを宣言した。
「トア、僕は最初、君とも仲良くしたかったんだよ?
だから、ごめんね。
次の生まで、だいぶ時間があるだろうけど、次はどうか、幸せを間違えないで」
肩を押さえて悶え苦しむトアに、最期の言葉をかけた。
「#神の裁き__ジャッジメント__#!!」
眩い光がトアを包み灼き尽くした。
「ぎゃあああああああっ!!!」
魂を灼き尽くす光が、トアの体を包み残ったのは小さな核が一つだった。
僕はトルクに許可を得て、核をマナイに渡した。
「トア、バカだな。
こんなに小さくなってしまって…
あんなに、あんなに!」
三つ子として育った記憶は、幸せなこともあった筈だった。
なぜ、分かたれてしまったのか。
「マナイ兄様」
「うん、大丈夫。
私は立ち止まっていられない。
咲季ちゃんがほんやり過ぎるからね」
「もう!兄様!」
やっと、やっと、マナイを心から安心させてあげられた。
「マナイ兄様、僕だってマナイ兄様の為に使います。
神様、お願いです。
その祝福をマナイ兄様の為に」
眩く光る塊が、僕とマナイを包んだ。
咲季はいつも何かしらのトラブルを抱えてるねー
神様、マナイ兄様に足を治して
咲季が発動してるんだから、咲季が決める事だよ。
ありがとう。
マナイ兄様の足を元通りに!
咲季ちゃん、どうゆう事?
僕が神様から貰った祝福だよ。
マナイ兄様の足を元通りにする。
治癒魔法で治せない部分を祝福なら元に戻せるからね。
足が…、治る。
うん、兄様。
光が小さくなると、マナイの千切れた足が修復された。
「さあ、帰ろうマナイ」
「帰りましょう、マナイ宰相」
「マナイ兄様、僕を守ってくれるんですよね?」
「みんな、ありがとう
咲季ちゃん、必ず守る、守るよ!」
「うん、帰りましょう」
やっと一連の拉致事件が解決したのだった。
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