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「………う~~~、あぁ~~~~~…………」  昼間っから一人、酒を空けてベッドの上で悶々とする。  あれからゆっくり時間のある夜は二人でエロビ鑑賞会。  真面目な咲也は俺だけ口を使うのは申し訳ないと思ったのか、自らすると言い出して交代でしゃぶり合うという大展開。  さらに「こっちのが効率がいい」なんて提案したらまたも素直に聞いて相舐めなんてことも果敢に挑んでくれる健気っぷり(もちろん俺の方はゴム付き)。  でも。 「ちがうんだよぉ~~俺は咲也とがっつりセックスがしたいんだよぉ~~そのアナルにずっぽしブチ込みたいんだよぉ~~~」  もっといろんなところ触ったり触らせたり舐めたり舐めさせたりして、俺のビッグマグナム大活躍で喘ぎ声だけじゃなくてその喘いでる顔もじっくり見たいんだよぉ~~~~。  だけどさすがにそこまでやっちゃったら関係崩壊するかもしれないし。  あぁ、もう。出展が本格的に決まったからそっちに取り掛からなきゃいけない、ってのに頭の中は咲也でいっぱいで。  しかもこんなヤバイ関係になってるっつのに咲也は全く変化もなく家のことをてきぱきやってくれてるし、笑顔でお出迎えしてくれるし美味しいごはんも作ってくれる。  健気なだけだと思ってたのに、ホントになぁんにも考えてないってんならどんだけ俺を翻弄する小悪魔ちゃんなんだよ、さては夜は娼婦タイプだな!?  くそぉ~~。オーラルセックスしだしてからの方がツライ、ってどういうことだよぉ~~~。  さらに枕を抱えてジタバタしてると、トントンと部屋のドアをノックされる。お。買い物から帰ってきたんだな。 「っ、…………咲也ぁ? 入ってい~よ~」 「あの………友樹さん、昨日から部屋にこもっててごはん食べてないでしょ? 大丈夫?」 「…………んぅ~~~~」  とっさにうつ伏せなって泥酔しきった演技をする。 「あっ、お酒なんか飲んじゃ胃に悪いよ。ね、リンゴとバナナ買ってきたよ、食べる? ヨーグルトもハチミツもあるからかけても食べやすいし」 「ん~~~…………」  人の気も知らないでヨーグルトやミツをぶっかけちゃう、とかしれっとイヤラシイこと言ってんじゃないよ………腕を伸ばしてちょいちょい、と手招きをして呼び寄せる。 「友樹さん………ホントに大丈夫?」 「ごめ~んね、なんか何もかもが嫌ンなっちゃってさぁ~~」 「展覧会のこと?」 「ん~~………ぅ」  またジタバタしてると、咲也は優しく背中をさすってくれて。 「無理だけはしないでね? 友樹さん、たまにこうやって根詰めちゃうところあるから…………僕、心配だよ」  最後の言葉は、ほんとに消えそうなくらい小さな声で。  なんだよ。俺のことそんな角度からも見てくれてたのかよ………ただのおバカなにーちゃんでいたかったのに恥ずかしいじゃん。 「…………………………」 「あのね、………今度、時間が空く予定だからちゃんと新居探しに行こうって誘われたんだけど。  なんか、僕………正直迷ってて…………」 「なんで? 晴れてのマイホームだろ? 犬だって飼いたいつってたじゃんか」 「そうだけど…………義兄さんのこと、ほっとけなくて」  ずりぃな、コイツ。こんな時だけ俺のことをそんな風に呼ぶなんて。 「なんだよぉ、今さらそんな俺の心配なんかして。そもそも邪魔してたのは俺の方、っ、で…………」  頭を撫でようとゴロリ、と体を起こしてハッとなる。  咲也は静かに泣いていて、思いつめたような表情をしていて。 「な、なんだよぉ、どうしたんだよ」 「ごめんなさい。なんか、わかんないけど…………」  さらに真っ赤になって涙ぽろぽろこぼしだして。 「義兄さんといるのが楽しくて………いろんなこと知れて………でも、男同士ってどういうことなんだろってわかんなくなって。きっと、義兄さんが思っているのとは違って、勘違いなのかなって………でも………」  気づいたらその腕を引っ張って強く抱きしめていた。 「っ、義兄さ、」 「義兄さんなんて淋しいこと言うなよぉ。俺、咲也のこと好きなんだから………」  あ。言っちゃった。 「ホント、に?」 「もう無理だよぉ………咲也にそんな顔されたら俺我慢できなくなっちゃうじゃんか」  酔った勢いなんて最悪だ。だけど。 「友樹さん………」  ぐしぐし泣きながら咲也はしがみついてくるから。 「………ビデオ、観なくていいの?」 「いい。いらない。二人きりになりたい」  そしてそんな可愛いこと言ってくれるから。  いつもの頬擦り代わりに、顔を寄せてはじめてその唇にキスをした。 ◆◆◆  いやぁ~、昼間の咲也は予想以上にビンカンでエロい体だったなぁ。  従順さも変わらないし、もっといろんなえっちなこと教えちゃおっかなぁ~っと………………ん?  夜中。ションベンしたくて部屋から出たとき、リビングに明かりが灯っていて話し声が聞こえた。 「………だから、僕は新居はもう少し先でもいいかな、って思って」 「確かに今の私の勤続年数じゃ審査もギリギリって上司にも言われたけど」 「でしょ? この家もあることだし今は貯金優先にして、落ち着いたら君が本当にいいと思える素敵なところを見つけて暮らすってのもいいかなって。ほら、君の御両親みたいに」 「でもここじゃ兄貴居るじゃん。私はいいけどアイツほぼ家にいるんでしょ? 正直、暗くてうざくない? 陰湿なことされてないよね?」  ま、それは俺の『表向きに見せてる顔』だしね。 「そんなことないよ。お義兄さんとても物静かだし、僕もここにいて邪険な扱いなんてされたことないし。  一応気になって一回聞いたんだけどね、ぼそぼそっと気にしてないよって言ってくれて」 「話したんだ? まぁ、予想通りのリアクションだよね。なんにも考えてなさそうだし、ずっとぼんやりしてるしね」 「あ、それにね、………そのうち、自分のアトリエ持つって言ってた、かな………」 「へぇ、アイツやっと自立するんだ。じゃこの家が空く、ってこと?」 「もしかして、だけど。だから今はまだ住む場所のことは置いといていいんじゃないかな、って。  それに………これからって時に君に余計な負担かけさせたくないと思ってるし。体壊したら元も子もないからね」  咲也の声はやけに低く優しくて、妙に落ち着き払っている。  妹だけに見せる『表向きの顔』とも思えるし、もしくは、……… 「………よかった。兄貴のことでちょっと不安に思ってたところあったから焦っちゃってたのかも。そう言ってくれて助かったよ………そうだね、もう少し先でもいっか。私もまだまだ仕事に専念したいし」 「うん、今はその方がいいよ。家のことは僕がちゃんとやるし心配しないで頑張っておいでよ。  僕の方も貯金が増えるようにもっと頑張るし、………お義兄さんとも上手くやっていくから、あ、元々ほとんどしゃべってないし問題ないから大丈夫だよ」 「そう、それ聞いて安心したよ………そもそも私自身が兄貴と昔から気が合わないからさぁ、性格が逆っていうか」 「ふふっ。確かに似てないかも。………僕は君みたいなひたむきで明るい人が好きだから」 「うん、ありがとう。あなたが支えてくれて、本当によかったって思ってる」 「大切にしたいと思った人だもの。当然だよ」 「………………参ったね~。  いくらおバカなにーちゃんでもわかっちゃったなぁ」  どーりで都合よくコトが進むなぁ、とも思ってたんだよねぇ。 「気は合わないけど、さすが兄妹ソックリだね」  同じ男に惚れこんで。  同じ男に、…………上手く騙され乗せられて。  ったく、とんだバカ兄貴を演じさせられたもんだねぇ………でも手放す気はないし、ちょっと悔しいから今度お仕置きしちゃおうかしらン♪  ………それとも。互いに騙し合ったまま楽しんでやろうか。 「さて、次はどんなテで誘ってやろうかな…………」  ―――ホント、可愛すぎる上に意外にしたたかだった義弟で困っちゃうよ。

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