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第16話
「じゃあ、両想いだ」
綺麗にあがる口角につられ、航太も笑みを浮かべて見せる。と、ペニスを扱く手が止まり、端正な顔が至近距離へと近づいてきた。
「や、やめる……な」
「いかせてほしい? だったら航太からキスして」
「ん……うぅ」
言われるがままにキスをすれば、体を強く抱きしめられる。「ありがとう」と囁く声に、どういうわけか心臓の音が高鳴った。
「俺のこと、殴れるなら殴っていいよ。でも、俺は航太を手放さない」
「あっ、あっ……ああぅっ!」
いきなりペニスを上下に扱かれ、航太はあっけなく射精する。ようやく極めた絶頂に……ハアハアと荒く息をしていると、伊織の顔が近づいてきて再び唇へキスをされた。
「むぁ……ん、な……に?」
「特訓、成功したな。俺が触っても航太は大丈夫になった。気持ち悪くないだろ?」
耳元で響く伊織の言葉に航太は小さく頷き返す。他でもない彼が言うのだ。きっとそうに違いない。きっとそうに違いないが、伊織はどうして航太にキスをするのだろう?
「眠かったら寝てもいいよ。俺は勝手にやるから。冬休みはまだ始まったばかりだ。馬鹿な航太でも分かるように、ゆっくり、ちゃんと教えてあげる」
「ん……んぅ」
再度唇を塞がれて、舌が口腔へと入り込んでくる。こんなこと、伊織とするのは間違っていると分かるから、航太は彼を押し戻そうと手を動かしてみるけれど、なにかが邪魔をしてちっとも上にあがらなかった。
「ん……ふぅ」
胸の尖りを指で摘ままれ、そこを緩く揉まれた航太は、喉を鳴らして無意識のうちに腰をカクカクと上下へ揺らす。
「俺が触ったら気持ちいいだろう」
「ん……んぅ。もっと、もっ……とぉ」
「しょうがないな」
舌を突き出しもっとと強請る航太の意識はまだ殆どが夢の中だ。けれど、こんなに気持ちの悦い夢ならば、いつまででも見ていたい。
「俺の言うことなんでも聞く?」
「きく、きくからぁっ」
「じゃあ、ボクは伊織の恋人ですって十回言って」
「……クは、いおりの……こいびと、ボクは……いおりの、こいびと、ボクはいおりの……」
「航太、こっち見て笑って」
「……ボクはいおりの……こいび……と」
スマートフォンをこちらに向け、嬉しそうに微笑む伊織に半ばつられるような形で、航太はゆっくり口角をひき上げ、不格好な笑みを浮かべた。
「ボクは……いおりの……」
伊織に強要された言葉を、呪文のように唱えながら。
【おわり】
ありがとうございました
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