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シングルBeLlに寝取ラレテマス2020 完
受主人公/一途恋人受け/ケモ耳美少年攻め/寝てるだけカレシ/
夜の訪問者に、サンタクロースが来たのかも知れないなどと冗談を言った。恋人・清野 天満 は少し不安げに鐘輔 を止めたが、鐘輔は構わずに玄関を開けた。国営放送局の受信料徴収だろう。払っていても手違いで時折、訪問することがある。或いは宅配便で友人のサプライズ的な贈物か。多少の落胆も事前に視野に入れていた。しかし警戒はなかった。この地区は治安が良い。何より今はリビングに恋人がいる。
来訪者の正体は、少年だった。否、ヒトであるか怪しかった。あまりにも質感のある猫や兎と紛う耳、頭頂部から伸びる枝に似た片角。膝から下は履物の類とは思えない毛に覆われ、蹄が生えている。何よりもまず鐘輔を驚かせたのはこの15、16歳くらいの玉のような美少年は首にバンダナを巻いただけの全裸であることだった。犬の首輪代わりのような布の上には大振りな号鍾を垂らし、赤々としたリボンの装飾も忘れない。雪だるまの形をしたイヤーマフや本物のような気がしてならない獣の耳を飾る柊黐 の実と葉に茶目っ気があった。
鐘輔は目を見開いた。異常性癖変態、露出狂、もしくはどこかしらに異常を来している者の訪問に、喉が固まった。恋人を呼ぼうにも金縛りにあったように動けなかった。尋常ではない来訪者が記号化された少女と見間違うような孅 げな印象を与える、愛くるしい顔立ちをしていることもまったく認識の外だった。恋人を呼ぼうにも、声が出ない。チェーンロックを掛けなかった自身の迂闊さを呪いながら、不気味なほぼ全裸に等しい美少年の侵入を赦してしまう。後退ることもできなかった。蹄らしき毛皮のブーツを履いたまま中に入ってくる。
「ぁ………」
やはり声は出なかった。可憐な顔の鹿や山羊を思わせる耳と角を生やした少年は、同情を乞うようなあざとさのある上目遣いで鐘輔を捉える。目が合った瞬間、不思議な感覚に陥った。前後左右が分からなくなり、耳には降雪を表したような小さな鐘の音が鳴り響く。光芒を放つオーナメントが実るクリスマスツリー。積み重ねられた光沢のあるラッピングとプレゼントボックス。緋色の円形光が疎らに散っている。儚いスノーグローブのようにも見えた。おそらく数秒の出来事だった。直後は夢から覚めた時のように覚束ない。気が付くと色艶の良い淡いピンク色の唇が眼前に迫り、恋人のいる唇を塞いだ。変質者の侵入に、身体は眼球と心臓くらいしか動きはしなかった。末端冷え性が行き過ぎて、凍り付いてしまったようにおそらく年少者の露出狂から逃れることができなかった。恋人と以外のキスを拒むこともできない。早くリビングの好い人にこの異変を告げなければならなかった。変質者に大切な人が暴行されてしまう。鐘輔は焦った。途端に、刹那的な痛みが四肢に起こる。それは静電気によく似ていた。踵が浮く。指が軽やかに曲がる。自分の肉体を取り戻す。鐘輔はスリッパの足音も、そこから派生する物音も気にせずリビングに駆け込んだ。頭のおかしな少年変質者に天満が酷いことをされてしまう。その不安と恐怖に暖房に包まれていたリビングが南極と化した。能天気に色を変え点滅しているイルミネーションとクリスマスツリーの前で、天満は裸に剥かれていた。彼は、布団か組み立て式のテレビ台を入れていたのかと思うほど大きな箱から上半身を晒している。意識は無いようだった。リボンが海外の動物番組で観た大蛇よろしく、筋肉質ながらも引き締まり華奢な印象を与える現代的な肉付きの、天満の裸体を包み込む。
「や、やめろ……!」
鐘輔は意識のない恋人に飛んでいった。ベロア生地の深い赤みを持ったリボンという毒蛇の踊るボックス型の底無し沼に天満は沈んでいっている!
「天満!起きて、天満ぁ!」
見覚えのないクリスマスリースを首から掛けている。固そうな素材が浅黒い恋人の肌に擽るように刺さっている。
「ダメだゅ……お兄ちゃんはもうボクのなんだゅ」
まるきり忘れていた存在がある。もしリビングで、まず目に入ったのがこのような状態の恋人でなかったら、意識はすべて気味の悪い、浮ついた、得体の知れない美少年に注がれていただろう。恋人も儚げな美少年も、違う方個性で健康な状態ではない。鐘輔は恋人を優先した。変質者に変態的な行いをされないよう、リボンに化けた蛇の巻き付く天満の裸体を庇った。
「そのお兄さんは、他の人のプレゼントになるんだゅ」
「いやだ!」
近所迷惑になることも頭にはなかった。少しはあったかも知れない。しかしむしろ、この異変を感じ取り、通報して欲しいとまで考えても無理はなかった。本物の鹿の耳を切り取って付けたとしか思えない飾りが上下に動いた。
「他の人のプレゼントになるんだゅ!明日には大きなクマさんのぬいぐるみになるんだゅ!諦めてくれめんす」
バンダナ型の首飾りと土足じみた蹄型毛皮ブーツ以外、この季節にも関わらず布を纏わない、社会的な正常さを著しく欠いた麗しい少年の腕が鐘輔に触れた。
「放せ、触るなっ!」
「お兄ちゃんはボクのプレゼントなんだゅ!ボクのプレゼントになるんだゅ!」
着ていたフーディーの袖ごと強く掴まれる。
「お兄ちゃん!」
「やめろっ!なんでオレたちなんだ!」
いやにクオリティの高い獣耳の美少年は透明感のある目を真っ直ぐ鐘輔に向けた。ふたたび、玄関で味わわされた白昼夢みたいな玄関に陥った。
「覚えてないんか?お兄ちゃん……」
意味深長な態度に鐘輔はたじろぐ。
「何を………」
「やっぱ覚えてない。ボクが思い出させてあげゅ………カ、ラ、ダ、で………」
対人距離 を侵すような目交 いで美しい変質者は照れ臭げに呟いた。白く円 い頬が赤らむ。艶出しを塗ったように鋭い光沢を帯びた爪が鐘輔の腕をがちりと掴んだ。不穏な感じがした。抗えない強さで引っ張られ、鐘輔は恋人から剥がされかけた。細さのあるシルエットのなかで筋骨逞しい身体にしがみつく。
「ボクとえちするんだゅ!お兄ちゃん!ボクとえちするにゅ~!」
おかしな喋り方の露出狂は、恋人を守るように抱き締める鐘輔のフーディーを鷲掴み、躍起になる。おそらく卑猥なことと思われる俗語を並べている不気味な少年に戦慄する。話が通じそうになかった。力も強い。惜しげもなく視界情報として叩き込まれる裸体は、腰が細いものの筋肉質で、顕著な腕には推定年齢にそぐわない硬げな丸みと強げな括れが連なっている。腹も薄らと筋を浮かべ、その下には数えるほどの毛と、大きな肉塊が垂れている。可憐な顔とは印象に大きな差がある。発想の粗い、それでいて作りは上手い合成写真のようだった。
「お兄ちゃんにこんなのは要らないゅ!」
少年の無邪気な声とともに下肢を包んでいたジーンズが四散する。爆風も衝撃も痛みも何もなかった。切れ端すら残らない。下着も消えていた。幼くも麗しい露出狂よりも半端なその姿は羞恥を煽る。
「何す……っ、」
抗議も赦されなかった。少年に急所を握られている。次には脅迫の文言が降ってくるに違いない。それでいて縮んでいる袋を揉み込むような、感触を確かめて愉しんでいるような優しい不気味さがある。
「お兄ちゃん、ここでキモチヨクなるんだゅ……」
双珠を汗ばんでも乾燥してもいない、ちょうどよい湿度を保った掌によって転がされる。得体の知れない子供にそこを捕らえられている緊張感と本能的な恐怖しかなかったはずだった。
「あったか~く、あったか~く、なるんだゅ~……」
手付きは段々と恋人にしか許さない甘く、淫らな色を帯びてくる。緩急をつけ、ふたつ並ぶ弛みをあやしている。徐々に恐怖と不安が溶けてしまっていた。この異常性癖としか言いようのない少年が気味悪ければ気味悪いほど、悲劇的な欲求が深まっていく。
「や、めろ……!」
「やめないゅ」
肌李が輪郭を研ぎ澄まし、太い幹の中には弱々しい電流が体外に走っていく。子供の指先が悪戯らに双果実を軽く突いて弄ぶ。
「放せ……」
頭のおかしな少年から身体を翻し、恋人の頬に手を添える。ぞっとするほど冷たかった。リボンに化けている蛇は蜷局 を巻き、底無しの箱に呑まれていく。
「天満、起きろ!天満、天満……」
恋人は重く目蓋を閉ざし、反り返った睫毛ひとつとして動かなかった。リボンは腰で大きく結ばれて落ち着き、後はプレゼントボックスにゆっくりと沈むだけだった。
「ムダだゅ」
「天満を放せ!オレはどうなってもいいから………ッ!」
危機感もなく気絶している男の肩に腕を回す。抱き上げようとした。だが後ろから腰に腕を引っ掛けられる。咄嗟に足を開いた。布の消えた尻の中心に尖ったものを押し当てられる。
「はぅ………っ!」
冷たくはなく、プラスチックなどの固さはない。ある程度の軟らかさと曲がらない硬さ、摩擦の感じからいうと指に違いなかった。
「お兄ちゃんはボクとえちすることになるンゴね」
昨晩、適切な関係のもとで愛し合った。そして今晩を望み、前戯を楽しみたがる相手に甘えられず、今晩だけは衝動のまま熱烈な営みを求め、用意してしまっていた。つまり部外者を完全に、絶対的に拒否する自爆的な封鎖がそこにはなかった。肉体は意思を裏切り、気持ちの悪い獣耳を付けた少年の体温を通す。こさ
「ぃ……あっ……」
「あっあっ、スゴく熱いゅ!熱いゅ!きっと気持ちいいゅ!」
指はおそらく一本ではなかった。興奮した様子の若い変質者は第二関節まで乱暴に抜き挿しした。鐘輔の恋人に愛され過ぎて慣れてしまっているそこは簡単に人違いを起こす。恋人もしない雑な指遣いを宥めながら、その皺襞と熟肉は若草を指導しようというのだ。食い締めて、奥へ誘っている。
「指くぱくぱされてるゅ……お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
荒々しい吐息が鐘輔の耳に届く。生々しさは恋人とするときのような艶やかさに欠けている。
「やめろ………放せ………天満ぁ…………」
恐ろしさに膝が震える。そこに入るのは恋人しかいなかった。肉体は侵入者を唯一の人と重ね、熟れた悦蕊は歓迎している。指の太さも動きも長さも違うというのに、目の前の裸体と肌に伝わる体温のせいだった。天満に懸想し自慰に耽った日々に等しい。ありありと脳裏に、あるいは借りたタオルに、もしくは気紛れに掛けられた通話に、好い人を感じる。それが鮮烈な痺れと陶酔を呼び、胸の奥に秘めたものが融解していく熱と潤みに溺れる。
「ぁあ……」
痛みはなかった。痛みがないどころか、拒めない疼きが広がる。肉体は正直で、しかしその正直さに誠意はない。鐘輔は眠っている恋人の片手をリボンから引き上げた。軽く開いている手に指を絡める。本心も恋慕もそこにある。力のない指々、硬さのある掌に体温を預けた。
「合体するんだゅ!合体ッ!」
不成者の賤しい細枝が勢いよく抜けた。卑猥な水音がする。快感を起こす浅い箇所を掠っていた。艶美な疼きを伴う波に意識が揺曳 する。休む間も与えずに、身体を貫かれる。左右に引き裂かれるような一撃だった。
「あああッ」
「ぁぅう………熱くてキツいゅ………キモチイイ!キモチイイゅ!キモチィィ!」
内肉を捲り出すような激しい、加虐的な抽送だった。しかし粘膜同士の擦れ合い、圧 し合いは堪らない淫楽を齎 した。
「好きだったんだゅ!好きだったんだゅ!お兄ちゃん!お兄ちゃ、お兄ちゃん!キモチイイんご!」
「あっんっんっんっあぁ……!」
鐘輔の臀部と全裸に獣耳の飾りを付けた変態少年の腰部がぶつかり、乾いた音がリビングを支配する。肌と粘膜の衝突、深奥部に達する快感、恋人を眼前にしての不貞、すべてが悍 ましくも肉体を誑 かす。
鐘輔は恋人の胸をなぞった。繋いだ手の力を強める。脚の間、床に影を作る張り詰めたものから未練がましく粘こい蜜がなびいている。腰を突かれ、花肉の壁に固く太く熱いものが穿たれるたび、振り子と化した。
「お兄ちゃ、お兄ちゃん!還ってくるんだゅ!ボクの思い出しスープで、思い出すんだゅ!」
イルミネーションの点滅なのか、自身の視界の明滅なのか鐘輔はもう分からなかった。ただ自分の膝下が毛に覆われ、足に蹄型のブーツを履かされているのを他人事のように見ていた。
「ボクと一緒に、トナ界に還るんだゅ!」
年少の変態男の強靭な腰遣いによって音は掻き消され、聴覚はすでに停止し、絶頂一直線に全身のすべてが集中していた。
「あっぁっぁっぁぁぁっ!」
つい最近、恋人と覚えた開拓地にさえ美しい異常者は踏み込んできた。前よりも、浅いところよりも深く長い淫欲に果てる。恋人の手を握り潰してしまいそうだった。不本意に、恋人と錯覚した偽楔を締め付け、搾り、うねって絡ませた。情けない悲鳴が聞こえ、間を置かず怒流が叩き付けられる。
「く………んんっ、」
「還るんだゅ!」
「ぁッ…………ぅ、ぅ………い、やだ……」
背中と尻で、変質者はぶるぶると震え残滓まで鐘輔の恋人の逢洞に塗りたくった。
「もうボクがマーキングしたンゴ!臭々 思い出しスープでマーキングしたんだゅ!」
恋人は鐘輔の願いも虚しく、するすると彼の手を抜け、プレゼントボックスに沈んでいった。リボンが結ばれる。叫んだ。頬が濡れる。
*
目が覚める。身体に巻き付く腕を剥がした。恋人と過ごすクリスマスの夜。明日からは休日だろうと平日だろうと関係なく、カレンダーにマークはない。何かいつもと違うセックスは、クリスマスの特別感がそうさせたのだ。浮気を疑ったことはなく、今でも疑ってはいない。
――ああ、そうだ。さっきの変な来客 に、オレが怖がったから……
鐘輔は恋人からもらった大きなネコのぬいぐるみを抱き締めた。リースの首飾りが痛痒い。
【シングルBeLlに寝取ラレテマス2020 完】
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