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第14話

 音楽がジャカジャカ鳴っている。久々に酔いが回るほど飲んだ。肉を焼いた匂いが(くゆ)っている。 「れぇあん」  キッチンテーブルに俯せになりながら甘えた声で勘解由小路(かでのこうじ)が呼んでいる。 「なんだ」 「なんでもねぇよ。風呂も一緒に入るんだかんな。目、離したら、れーあん、死んじゃうじゃん」  勘解由小路は立ち上がってラグを敷いただけの床に寝転ぶ。 「床で寝るな」  真城は寝袋を出そうとする。これはあまりにも同居人と化しているために寝袋を用意したものだった。 「れぃあんも一緒に寝るべ。風呂場で手ぇ切る気なんだ」  寝袋を抱え真城が傍に腰を下ろすと、勘解由小路は仰向けになった。眩しげに目元を覆う。 「すまなかった。手を焼いたこと……仔牛郎がそこまで気にするとは思わなかった」 「……嘘こけ。そこまでもクソも、(おい)ちゃんのことなんか微塵も考えてなかったクセによぉ」  腰を弱く殴られた。 「すまなかった」 「いいよ、別に。俺ちゃんのことで手ぇ焼いたんじゃねぇんだもんな」  宗教上の身内は臍を曲げたように背を向けて寝息を立てた。真城はファスナーを組み合わせて掛布団にすると勘解由小路を覆った。そしてふらふらと浴室に向かっていく。 ◇  世良田(せらだ)は弟の自宅アパートに寄っていた。弟といっても血の繋がりはなく、世帯が同じだったこともない。弟といえるのかも分からなかった。婚約者の弟というだけだ。兄には内緒で会っている。弟の健康問題を彼女は知っていた。彼は兄の呪縛によって成人してもまともに生理現象の処理ができない。そういう点は片親違いといえど兄弟で似ている。  インターホンを鳴らす。背後、下方で会話が聞こえる。弟の隣人とその友人だ。紙袋がビニール袋の奥に見えた。ファストフード店のテイクアウトだろう。すれ違うのが嫌だった。インターホンを押してもすぐに出てこない鈍間な家主へ内心悪態を吐いた。婚約者の弟の隣人とその友人が階段ホールに差し掛かっている。ドアが開いた。鍵もチェーンロックもない。兄の言い付けなど守っていないではないか。気楽なものだ。 「お義姉ちゃん!」  甘えた声で梢春(すえはる)が姿を現した。無邪気であどけない。高校生が出てきたと思ったが21歳だという。肉体だけ成長したような厭らしさがある。疑いもなく兄の婚約者に腕が絡みついた。己が牡であることに自覚もない。 「元気だね。ご飯は食べたの?」  子供みたいな薄気味悪い婚約者の弟をさりげなく引き剥がす。実弟の姿を確認した時から世良田はこの兄に囚われた子供が不気味で仕方がなく思った。しかし兄に玩具にされ病的なものを感じさせるまでに迂愚に育ったそのあまりの哀れさに厭悪(えんお)の念は吹き飛んでしまう。 「まだ食べてない!何か買ってこようかなって思って」 「じゃあ、おっぱいマッサージしたら食べに行きましょう」  梢春は目を輝かせる。世良田の冷ややかな眼差しに気付く様子もない。リビングに通され、素朴な生活感を見せられる。前に来た時はなかったカーテンが掛かっている。買いに行くとき手伝いはしたがどういうものを買ったのかは把握していない。 「おっぱい……ヒリヒリするから隣の人からクリームもらってね、塗るようにしたんだ。この前カーテン買いに行った時、一緒にいた子なんだけど……」 「あの真面目そうな子ね」 「うん」  彼はソファーに座り服の裾を捲る。兄と違い筋肉質で腹は割れている。イヌだネコだウサギだハムスターだという可愛がられ方をしているようだが世良田からすればカンガルーだ。 「塗ってあげる」  渡されたハンドクリームはチューブタイプの予想に反してジャータイプで、祖父母の家にひっそりと置いてあるようなレトロな雰囲気が人気のどこかで一度は見たことのあるものだった。世良田もよく覚えている。家族4人で暮らしていたときに使った覚えがある。姉弟揃って乾燥肌だった。冬場に母がよく買ってくるのがこのハンドクリームだ。 「お義姉ちゃん?」 「なんでもない。ほら、おっぱい出して。服に付かないように持っていて」  片側だけ少し使った形跡があり、その反対側だけ指の形が残るように抉り取られているのが性格の対比を表しているようだった。前の持ち主の跡から掬い取る。ぷつりとした乳頭に硬さのあるワセリンに似たジェルクリームを塗り付ける。塊を乗せてから薄く伸ばす。指の腹に小さな実が抵抗する。 「……っん、」  円形に近い薄い皮膚全体に行き渡るようゆっくりと優しく指を回す。 「脱がないの?下着汚すんじゃない?」 「う、うん……」  陰茎に対する手淫を禁止されても勃起はする。性感帯にされた胸の頂を刺激され彼の股間はすでに布を押し上げていた。恥ずかしげもなく梢春は兄の婚約者の前で陰部を露出する。露茎の兄とは似ず仮性包茎のようだ。大きさは標準といったところだろうが世良田もまじまじと見るのは彼とその兄のものくらいで目見当の比較でしかない。  前から乳頭を捏ねる。真紅のネイルカラーの照るしなやかな指に芯を持った胸の粒が引っ掛かる。不規則に触り方を変えた。梢春は腰を捩る。 「お義姉ちゃん」 「何」 「寂しくなっちゃう」  世良田は彼を立たせ、ソファーに座ると膝の間に弟を座らせる。兄よりもがっちりした背中に前屈みになって寄り掛かかる。華奢な女がひとり上体を預けたところで筋肉質な男はびくともしない。それでいて兄や世良田自身、梢春を右も左も上も下すらも分からない嬰児だと思っている節がある。 「集中して」  胸の小さな果実を引っ張る。指の腹の中で擂り潰すと背筋が反った。 「ぁ……っ、」 「出したいでしょう?ここで出さないと、あたし暫く来られないんだから。梢春(すぅ)ちゃん自分でおっぱいマッサージできるの?」 「できなぃ……」  小さな芯を押し込む。逃げようとするだけ近付いてくる腰に世良田はソファーの背凭れへ追いやられる。 「はァぅ………っぁ、お義姉ちゃ………っぁぅ……」  強めに捻る。弟の身体がびくびく震える。甘えた声は何か許して欲しいことでもあるようだ。 「あたしはダメだと思ってないから、おちんちんいじいじするの」 「あっあっあっ……おっぱいコリコリしちゃヤぁ……!」  規則的に上下に弾くと梢春は激しく感じた。指先にも張り詰めた興奮が伝わる。また擂り潰し、硬さを確かめた。 「コリコリさせてるのはどっち?(すぅ)」  凝った乳頭を指で叱責する。小さなそこがまるでプリンのように弾ける。 「(すぅ)ちゃん、梢ちゃんがおっぱいコリコリさせてるの……っ」  暴れる背筋を抱え、乳頭を刺激し続ける。 「あ、あァ……あァぁぁ………」  泣きそうな嬌声を上げ、梢春は触ることを禁じられた場所に響くもどかしい快感に身をのたうたせる。触られることなく吐精を求める茎は哀れなほど膨らみ、小さく蠢いている。胸への指淫で射精に向かおうとしている。実際彼は胸だけの快感で精を噴く。 「乳首絶頂(ピュッピュ)する時は言いなさい。おっぱいとおちんちんがビックリしちゃうから」 「おっぱいだけじゃヤ……」  兄にたっぷりと甘やかされ、あざとく媚びることも染みついている梢春は可愛らしく世良田にねだる。陰部を扱けない彼が最近覚えたのは裏側からの圧迫だった。教えたのは彼の兄の婚約者だ。  ネイルカラーのある手が筋肉の乗った下腹部を摩る。臍と禁じられた箇所の狭間を意味深長に撫で、指先で辿った。 「ここに大きいの挿入()れて、梢ちゃんの気持ちいいトコロいっぱい突いちゃおうね?」  泉のようになった弟の口の中に指を入れる。口角から溢れ、顎から滴り落ちる。 「お義姉ひゃ………っ」  引き締まった尻を叩く。彼の兄のような骨張った固さはない。ソファーに座面に四つ這いにさせる。 「お尻の穴みせて」 「………ん、」  弟はただの兄の婚約者でしかない女へ恥ずかしげもなく臀部を向け、奥まった秘渦を見せた。それでもある程度の羞恥心は働くらしい。顔を赤くして目が潤んでいる。 「ここいっぱいぐぽぐぽしてるの、お兄ちゃんは知ってるの?」  傷んだ毛先をシャラシャラ鳴らしながら梢春は頭を振る。 「お尻見られたらバレちゃうね。誰が梢ちゃんのココこんないぢめたんだろう?お兄ちゃん、怒っちゃうね。やめちゃおうか?」  世良田の喋り方はまるで幼児でも相手にするようで、兄から虐待と違わないほど甘やかされ可愛がられ愛でられた弟のほうもそこに違和感や抵抗はないらしかった。彼自身が舌足らずに喋っている。 「する……兄貴にお尻見せないもん………して、お義姉ちゃん。お尻して……」  彼女は軽く冷ややかに嗤ってリビングの棚から梢春の飢孔を慰めるシリコン茎と連結真珠棒を取り出した。だがその時、隣室から笑い声が聞こえた。隣人の連れの若干濁った質感のある声だ。壁一枚隔てたところから届いている。(おぞ)ましい婚約者の底気味悪い弟を嬲ろうという気が削がれてしまった。怪物の棲家に迷い込んだ心地だ。性加害に遭った気分だ。急激に、ソファーの上で呑気に尻を出している暫定的な義弟が憎らしくなる。ローションを掴み取った。憎い。気持ちが悪い。世良田は自分が自分でなくなるような不安と恐怖に襲われた。実弟にように振る舞うのが気色悪い。実弟どころではない。望んでもない婚約者との子に代わろうとしているような。十河梢春。兄共々その存在がグロテスクなのだ。  ソファーの上で待っている梢春の尻を叩く。乾いた音がした。 「あぅッ!」  子犬が虐められたように鳴く。 「左右に開きなさい。いやらしい穴を開くようにね」  言葉を刃物にできたなら、彼の尻は今頃血みどろになっていただろう。それほどまでに先程とは打って変わって世良田は冷淡な態度で、語気が研がれている。 「お義姉ちゃん……?」  ローションのボトルを握り潰した。ぎにゅにゅ、じゅぷぽ、と容器が歪み、多量の潤滑液が搾り出される。 「冷た……っ!」  窄まりに垂れ落ちるローションを塗りたくる。丁寧に慣らす予定は狂った。彼女の指は大雑把で、時折カラーネイルが尻たぶを突く。邪魔になって尻を張る。乾いた音がたつ。筋蕾が収縮する。 「お義姉ちゃ、お義姉ちゃ……待って……」 「ちゃんと慣らさなきゃでしょう?いきなり挿れるのが好き?」 「ち、違………っ、でも、お義姉ちゃ、急に………怖い………」 「自分でおっぱいコリコリしなさい。そのほうがすぐ入るから。頭おかしくなるくらい気持ち良くしてあげる」  ヒトのオスの性器を大きめに模倣したシリコンを手に取り、十分に慣らしたとはいえない狭げな窄まりに押し当てた。ヒトのメスの襞を突き進むために作られた形状は梢春のひくひく怯える花紋を散らす。 「はァァぁうう!」 「硬いじゃない。自分でくちゅくちゅしなかったの?」  涎を垂らしながら梢春は何度も頷いた。 「だって、お義姉ちゃんにしてほしかったから……」  二度と三度緩く抽送した。抵抗がある。ローションをまた逆さまにする。容器が悲鳴を上げた。梢春に刺さったシリコンの上で形を持った潤滑液が(たわ)む。 「牡穴(おしり)拡げなさい」 「お義姉ちゃ……―」 「いやらしい穴を緩めなさいって言ってるの」  義弟はソファーの肘掛けに上半身を任せ尻たぶを左右に割った。柔らかく歪んだ秘壺がひくひく世良田を煽る。 「お義姉ちゃん、怖い………」 「怖いの?あたしが?ひとりでおちんちんもおっぱいもお尻の穴もいぢいぢできない赤ちゃんにコリコリくちゅくちゅしてあげるくらい優しいのに?もう自分でやりなさい。見ていてあげる。だってもしあたしが今日の帰り、車に轢き殺されたらこれからどうするの?」  隣室から哄笑が聞こえる。本当に帰りに誰か自分を轢き殺してはくれないか。彼女は自嘲した。 「お義姉ちゃん、なんでそんなこと言うの」 「あたしも人間だからね。別におかしい話じゃないでしょ?ほら、梢。お喋りはこの辺にして。自分でくちゅくちゅするのよ」  梢春は唇を尖らせてしまった。 「お義姉ちゃん、死んじゃやだもん……おちんちんもしょんぼりしちゃった」  彼は皮の中に隠れてしまったのを見せる。元々乳首だけで育てたものだ。大した勢いはなかった。 「ピュッピュしたくなっても知らないんだから。おちんちんいぢいぢしたいのにいぢいぢできなくて、おちんちん壊すといいわ」  陰部を丸出しにしていることも構わず、梢春は明らかに落ち込んでいた。世良田の顔を見られないようで、胸元あたりまで見ようとしては視線を落とす。目は泳ぐ。両手の指を絡め合う。 「お、お義姉ちゃ……」 「ま、いいんじゃない?梢ちゃんあんあん感じてる声大きいから、隣に聞こえないほうが。今居るんでしょ?」  見計ったようなタイミングで小さく隣人の友人の笑い声が聞こえる。弟は聞いているだろうか。何も気付かず軽蔑すればいい。義弟を嬲って遊んでいることを。自堕落を求めた。自分自身に呆れる。心の奥深くで朽ちた枠と錆び付いた蝶番に固く閉じられた窓を開け放つ。そもそも自堕落だ。弟を虐げたのだ。偉ぶった穢らしい色欲の徒に売り渡した。 「おいで、梢ちゃん。抱っこしてあげる」  顔色を窺っている婚約者の弟はだらしなく露出したものをしまうと世良田に甘えた。何の下心も感じられず華奢な女の身体に纏わりつく。髪を撫でると押し付けられる。社会通念でいえば21の男がすることではない。 「お義姉ちゃん。死んじゃやだ……」 「無理だよ。人間だもの。いつか死んじゃうよ」 「やだ……!」  彼は子供みたいに本気にしてしがみついた。少年とはいえない図体を左右に揺らす。婚約者がこの弟を嬰児や幼児のままにした。 「かわいいね、梢ちゃんは」  何がそんなに面白いのか隣室からはまた笑い声がある。しかし家主のものではない。この状況を嘲笑されているようだ。涙ぐんで顔を押し付け、そこが女の胸部だと察することもない。時折わざとではないかと思うこともある。 「梢ちゃんイイ子にするから……」 「梢ちゃんはイイ子だよ」  健気な態度、甘えた声音、あどけない言動と外見のアンバランスさに薄気味悪い興奮を覚える。それは彼に対する好感とは程遠いものだ。 「梢ちゃんイイ子なら、自分でおしりいぢいぢできるね?」 「うん。梢、自分でおしりいぢいぢする……」 「じゃあお姉ちゃん、おっぱいコリコリしててあげるから」  ぐす、と梢春は鼻を鳴らした。まだろくに準備もできていない彼の両胸を触る。もう気分ではないようだが挿れてしまえばすぐにその気になる。今までもそうだ。尻の奥にあるツボを突けば萎えたものもたちどころに活力を取り戻すのだ。世良田はソファーに義弟を押し倒した。引き寄せたクッションを腰の下に入れ、陰茎型のシリコンを臀部に構えさせたところで手を離す。あとは彼の意思だ。窄まりがひくりと縮んだ。 「お義姉ちゃ……いっぱいピュッピュするとこ、見てて」  乳首を数度摘むだけで萎えたものはまた漲っている。 「ミルクぴゅっぴゅするところちゃんと見ててあげる」  上の性感帯を抓ると、婚約者の弟の牡棒はむくむく蠢いて膨らむ。 「あたしこの指だから、梢ちゃんのキュッてしたおしり穴くちゅくちゅできないよ?分かるよね?」   世良田は体内に挿入するには痛々しい程度に長さのある鮮やかな爪を見せた。その指で内膜を突かれたら傷が付いてもおかしくない。日常生活でさえ時折彼女は婚約者であり梢春の兄の腕などの薄皮を抉っている。 「自分でする……」  彼は自ら尻穴をいじる。体内に指を突き入れるのは鼻を穿ったり耳を掻いているのとそう変わらないはずで、まったく違う異様な感じがあった。しかし世良田はもう見慣れている。何度も指を出し入れし、ある程度まで拡がるとシリコン茎を迎えた。まだ無理矢理挿れたような抵抗がある。 「はぁ……ぅ、」 「無理矢理挿れたらキれるわよ」 「ご、ごめんなひゃ………っ、」  美味そうに(たわ)む無花果を世良田の指が揉んだ。ローションを塗り込む。 「あ、ぅ!」 「ちゃんと塗っておかないと、お兄ちゃんがいつ来るか分からないよ?その時にお尻見せなさいっていうんでしょう?バレちゃうかもよ、お尻切っちゃったの」  あの男はそれを見て身体を昂らせるに違いない。連絡がきて、また自涜に付き合わされるのだ。弟を犯す様を見ていて欲しいだの、女になってストーカーにレイプされ弟を産みたいだの、穢棒から出てきた腐汁を自分たち夫婦の子だの弟のなり損ないだのと言うに決まっている。否、それならばまだいい。あの男は尻の悦びを知った弟に劣情を催しとうとう兄弟の一線を越えてしまうかも知れない。この少年みたいなのの兄はそういう性獣だ。野獣にもまだ自然の摂理に準じた本能と抑止がある。しかしあの男にはない。 「お尻、も、だいじょぶ……」  彼はぐいと一気に実物の平均よりも太さのあるシリコンを受け入れた。最も幅のある先端冠を呑むと健気の無花果が収集する。 「お腹ちょっと押されて、気持ちい……」  恍惚を浮かべる姿に世良田は彼の臍の下を押した。 「ぁっうぅ!、なんで……ッ、!」  悲痛な顔をしながら声は甘い。手淫を求めるように触られずに微かな伸び縮みを繰り返して膨張するものがぷるりと小さく跳ねる。 「奥はまだダメでしょ?浅いところツンツンしないと出せないんだよ?ちゃんと浅いとこツンツンして白いの出さなきゃ、朝にネバネバおもらししてもいいの?」  梢春の器用に胸粒を捏ね続ける。楽器みたいだ。快感という負荷を逃す媚びた声が世良田の指に連動する。 「ネバネバおもらしヤ……っ!」 「恥ずかしいよね?ネバネバおもらししたくなかったら、ちゃんとここでピュッピュッしなきゃでしょ。奥ツンツンはそのあと」  泣きそうな目は世良田を見つめ、こくこく頷いてシリコン茎を体内に保ったまま抜き差しする。 「あっあっあっあぁ……んっ、ぁ、」  継続的な刺激を胸の先端両方に与えた。下腹部から伸びている牡芯も梢春とは別の生き物みたいに身動いでいる。 「きもちぃ、おしりきもちぃい……」  くちくちとシリコン茎が蕾襞とローションを弾いている。 「おっぱいもコリコリしてるよ?こんなに硬くして」 「おっぱい、もっとして……」  注文のとおり、凝っている小粒をキュッと抓った。 「や、ぁん!」  柔肉も知らず触られることない牡の(しるべ)が噎び泣いている。しかし婚約者の弟は世良田の言い付けを守らず、腹の真奥で達しようとしている。吐精する癖のついていないところで快楽を貪っている。今日は長くなるのを覚悟した。 「あ、あんっあっ、ァお義姉ちゃ、お義姉ちゃ……頭トロトロしちゃう、頭トロトロしちゃうの、あああアアっ!」  悲惨なほどの細く高い叫びを上げて梢春は全身を引き攣らせた。歪んだ眉と潤みきった目、寂しげな唇が憐憫と紙一重の加虐心を煽る。乳首を指の腹で押し込んだ。爪は立てずに柔らかく抉る。 「だめ、だめ……おっぱい、やぁっ……!」  大袈裟に痙攣して彼はそのうち深く息を吐いた。 「ネバネバ出してないね。おもらし決定」  哀れな梢春は射精を求める肉管を扱こうと手を伸ばしかけ、結局のところ触れないでいた。 「ネバネバおもらし、許して……」 「おちんちんムズムズして可哀想。泣いちゃってるじゃん」  無視された砲茎はトロトロと不均一な糸を垂らしいる。 「おしりツンツンしてネバネバ出すから、お義姉ちゃん、許して、許して……」 「早くやりなさい」  世良田の声音は通常に戻った。まだ咥えられているシリコン棒をゆっくり動かす。 「ま、待って、今は、や、や!あっああっ!」 「待ってたらまた奥がヨクなっちゃうんでしょうが」  陰部の真裏を探すが梢春は腰を捻って逃げようとする。 「だめ、だめ、やら、アッあっぁあ!」 「いっぱい突いてあげるから、赤ちゃんのネバネバいっぱい出しちゃいなさい」  容赦のない悦楽の悲鳴は隣まで聞こえたことだろう。ソファーの上で梢春は身をのたうたせ、悶絶し、やがて弛緩する。腹の筋や臍に粘度の高いゼリー状になった白濁がぼとぼとと落ちた。  インターホンが鳴る。いざそうなると世良田はぎくりとして自身の小心ぶりを嘲笑った。玄関ドアを開ける。不自然なほどの黒髪とシルバーアクセサリー。隣人ではなく、その友人だ。 「ごめんなさい、うるさくして」 「え?あぁ、いや……うるさくはなかったですケド、あー、居ます?」  呼び方が定まっていないのか、隣人の友人はばつが悪そうな様子で無遠慮に世良田の奥、玄関の中を覗こうとした。

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