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第五章・3

 現代家屋、とはいえ芳樹の実家はやはり日本建築だった。  さきほどの旧七浦住宅を、小ぶりにしたような雰囲気だ。  緑の庭は見事な松で飾られ、大きな池には橋が掛けられ、美しい錦鯉が泳いでいた。 「ただいま帰りました」  いつもフランクな芳樹が、ややかしこまった声音だ。  青葉は、そこで七浦親子の上下関係を測った。  どうやら、この芳樹をしても一筋縄ではいかない両親のようだ。 「まぁ、芳樹さま!」 「お久しぶり、清美(きよみ)さん」 「旦那様と奥様がお待ちかねですよ。さ、早く」  清美さん、とはどうやらこの屋敷の家事使用人らしかった。  彼女は素早く芳樹の脱いだ靴を整えようと手を伸ばしたが、そこで青葉の手とぶつかった。  青葉もまた、芳樹の靴を並べ直そうと手を伸ばしていたのだ。 「あ、すみません」 「いいえ、こちらこそ。あの、芳樹さま。こちらは?」  芳樹はそこで、にっこり微笑んだ。 「私の婚約者だよ」  まあぁ、と清美は目を丸くした。 「しかし、あの。この方は、男性、では?」 「彼は、Ω男性だ。世継ぎも産めるから、何ら問題はないよ」  口をぱくぱくさせる清美を置いて、芳樹は両親が待っているであろう応接室へと青葉を連れて行った。

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