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第十七章 怜と青葉
「自己嫌悪……」
ソファで頭を抱える芳樹に、青葉は眼を円くしていた。
いつも自信にあふれた彼には、珍しいことだ。
「どうなさったんですか?」
「青葉、私に勇気をくれないか?」
ソファの隣に座った青葉の手を、芳樹は両手で握った。
「ホントにもう、どうなさったんですか」
そこまでは笑顔の青葉だったが、芳樹の告白を聞くにつれ、表情はこわばっていった。
「実は、未だに君のお兄様に、婚約をお断りできないでいる」
初めてのお見合いから、すでに1ヶ月経っている。
一週間に1回の割で、芳樹は怜と会っていた。
「青葉のことを話そうとして、結局ずるずると。意気地のない私を、叱ってくれ」
「叱るだなんて」
そんなことできませんよ、と青葉は優しく微笑んだ。
「お兄様を驚かせることを、ためらってらっしゃるんでしょう? お気遣い、ありがとうございます」
叱ってもらうつもりが、逆に感謝されるとは。
芳樹は、青葉の慈愛に心打たれた。
「実は今度の日曜日、また彼と会うことになっている。青葉、一緒に来てくれないか」
「え!?」
「いつまでも足踏みしてもいられない。前へ、進もう」
「……はい」
大丈夫かな。
お兄様は僕の存在を、どう見られるかな。
不安と期待の混ざった気持ちで、青葉は日々を過ごした。
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