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第十七章・2
「怜、少しいいか?」
「はい、お父様」
土門は、息子・怜の部屋へ入った。
「七浦さんとは、どうだ。巧くいってるのか?」
「芳樹さんは、すごく優しく接してくださいます」
ふむ、と父親は顎に手を当てた。
「もし縁談がまとまれば、双方にとって非常にいい関係を築くことができる」
「解っております」
まだ18歳の怜を、30過ぎの七浦氏に嫁がせるのはどうかと思ったが。
土門は、息子の返事に気を良くした。
「怜はどうやら、自分の役目をしっかり解っているようだな」
「お任せください」
上機嫌の父を見送った後、怜は溜息をついた。
「家督は、αのお兄様が継がれるんだ。Ωである僕の役目は」
資産家に、嫁ぐこと。
僕は、政略結婚の駒にすぎない。
でも、と怜は頬を染めた。
「芳樹さんは、素敵な人だ」
高校のクラスメートには無い、大人の余裕と魅力に溢れている。
「今度の日曜日が、楽しみだな」
怜は、芳樹に恋をしてしまったのだ。
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