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第十七章・5

 芳樹はゆっくり目を閉じ、そして開くと同時に言った。 「青葉くんは、私と暮らしている。私たちは、愛し合っているんだ」  初めて、怜は動揺した。  正妻がいるとはいえ、何人もの女性たちを囲っている父だ。  腹違いの兄弟がいる事実を知っている玲には、正直双子の弟の件はさほど衝撃ではなかった。    だが、芳樹が。  彼が自分以外の人間と愛し合っていることは、頭を殴られたようなショックだった。 「そ、んな。でも、芳樹さんは! もう一ヶ月も僕と会ってくださってますよね!?」 「すまない。もっと早くに言うべきだった」 「僕、僕だって、芳樹さんのこと好きです。愛してます」 「怜くん。今は私のことより、青葉と話をしないか? 生まれてすぐに引き裂かれた双子の兄弟なんだ」  青葉。  さっきまで、『青葉くん』と言ってたのに、今は『青葉』。  それだけでも、二人の深い仲を知ることは容易かった。  静まり返ったテーブルに、三人。  青葉が、おずおずと口を開いた。

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