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ふわりと舞い込んだ風がそのままキョウヘイを攫っていってしまいそうで、俺は慌てて駆け寄った。 「危ないぞ。」 手首を掴んで抱き寄せると再び俺に重心を預ける。 すると耳元でキョウヘイが囁いた。 「ねえ、キスして……?」 思いもよらない言葉に息を飲んだ。 「……え、」 「だめ?」 肩に乗せていたキョウヘイの顔が離れ、俺の瞳を捉えた。 服越しでも伝わるくらい大きな音で鳴り響く心臓の音は、きっとキョウヘイにも聞こえている。 じ、と見つめる瞳に釘付けになった俺は、吸い込まれるように唇に触れていった。 「ふふ、アキラの心臓の音すごいね。」 「……悪いか。」 きっと今の俺は耳まで真っ赤だろう。 昨日今日と全く格好のつかない俺は、恥ずかしさからキョウヘイの胸元に頭を押し付けた。 トク、トクと規則正しく鼓動を重ねる心臓の音。 昨日想いを伝えていなかったら聴くことの出来なかったこの音が、何故だか少しだけ寂しく感じた。 こんなに儚い音だったっけ。 それでも響き続けるこの音が次第に心地良く感じて、キョウヘイを抱きしめた。 するとキョウヘイも俺の背中に腕を回す。しかしそれは僅かに震えていて、ぼそぼそと何かを呟くキョウヘイの顔を見ると涙を流していた。 「え、どうした。」 「……あれ、なんでだろう。あれかな、嬉し涙かな…。」 目元を拭う彼を再び抱きしめると、しゃくりをあげて涙を溢しはじめる。 「おかしいなあ。昨日から俺、泣いてばっかだ。」 「気ぃ張ってたんだよ。今まで辛かったよな。」 背中をさすると、縋るように俺の肩を掴んだ。 いつも笑顔でいたその裏には、どれだけの思いを押し殺してきたんだろう。キョウヘイの背中が、小さな子どものように感じた。 これからは無理して笑わなくていい。俺とヨリヒトはずっと味方だよ。そう言って腕の力を強めると、ありがとう。と何度も呟いた。

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