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先程まで聞こえていた雑音が嘘の様に静寂を極めていた。 4階に来るのはいつぶりだろうか。 一年生の時は部活動が強制参加だったから一応速記部に所属していたが、二年生から自由参加になったと同時に廃部になった。 階段を上がって直ぐ左の教室が当時の部室。 俺は何の思入れもない教室の扉を開けた。 「………!キョウヘイ……。」 目の前には床に座り込んだキョウヘイが項垂れていた。 俺の声を聞いてゆっくりと頭を上げた瞳は、黒く澱んでいた。 「酷い怪我……大丈夫か……。」 昨日の面影を残さない程の酷い怪我と疲弊しきったキョウヘイの表情。そっと近づくとキョウヘイはゆっくりと口を開いた。 「へへ……酷いでしょ、この怪我。」 「すげえ痛そう。」 頬に当てたガーゼは赤黒いシミが滲んでいた。 「急にいなくなったからヨリヒトが心配してたぞ。家まで送るから、一緒に帰ろう。」 キョウヘイに手を差し伸べると、痛みからか顔を歪めながら立ち上がった。まるで体の軸が無くなってしまった様にゆらりと揺れる身体を支えると、「ごめんね。」と呟いて俺に身体を預けながら歩き出す。 「昨日ね、叔父さんに話したんだ。」 「……うん。」 「そしたらなんか胸ぐら掴まれちゃって。はは、上手く避けられなかった。」 「………。」 「こんな姿でびっくりしたよね。ほんと、俺もびっくり。」 無理して話す彼の姿を見ていられなかった。 背中をさすると声が震えていくのが分かった。 「俺ね、アキラに好きって言ってもらえて本当に嬉しかったんだ。」 「……俺もだよ。」 「いつもふざけてるけど、ヨリヒトも大好き。」 「うん。」 キョウヘイは俺から離れ、腰程の高さの窓のさんに浅く腰掛けた。

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