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終業のチャイムが鳴り響びく。
一気に廊下がざわつき始めると下駄箱は話し声で溢れ、ユニフォームを着た運動部が校庭で声を上げる。
「もう夕方だし、流石に帰ってるんじゃないか?」
「うーん……、かもしれないね。」
「まだ4階見てないからさ、俺こっち見に行くわ。
ヨリヒトは先にキョウヘイん家見に行ってくれ。後から追いかけるから。」
「分かった。」
さっきからどうも胸がざわつく。
なんだろう、この感覚。
喉元がつかえる様な、心臓が締めつけらる様な、妙な感覚を俺は違和感だと気づく事が出来なかった。
ぎゅ、と胸元のワイシャツを掴むと、アキラは「じゃあ頼んだ。」と言って階段を上がって行った。
3階と4階の踊り場には、一際大きな窓がある。
市内を見渡せる程の大きな窓から西日が射し込み、まるでアキラが光の中に消えていく様に見えた。
「……っアキラ!」
気づいた時には大声をあげていて、逆光でアキラの表情は見えないはずなのに振り返って不思議そうに俺を見ている気がした。
「……何でもない。じゃあ俺先行くね。」
「おう。」
そう残して、再びアキラは階段を登って行った。
俺ももたもたしてられない。
とにかく、キョウヘイの無事が最優先だ。
俺は踵を返して下駄箱へと向かうと、ふと、今までのキョウヘイの言動が頭の中を巡った。
キョウヘイが大声で笑わなくなったのはいつだ。
毎日の様に溢していた叔父さんの愚痴を話なくなったのはいつだ。
何故か、俺は何も思い出せなかった。
妙な感覚は次第に焦りへと変わり、急いで階段を降りた。
スニーカーを乱暴に床へ投げ出し、踵を踏み潰して足早に土間を後にした。門へ向かう生徒をかき分けて目の前の交差点に差し掛かった時、背後から何十人もの悲鳴が鳴り響いているのが聞こえた。
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