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先生が出て行った後すぐに俺も保健室を後にした。 何を考えていたのか分からない、ただ何もしていないと自分が自分じゃなくなる様な気がして、身体の赴くままに廊下を歩いた。 『授業中に廊下を歩いていると、なんだかサボってるみたいでワクワクするねえ。』 『ちょっとわかる。そういえば授業中って先生達何してるんだろ。』 『おい、キョウヘイ何してんだよ……!』 『何って職員室覗いただけだよ。先生達お菓子食べてたよー。』 『え〜いいなあ。俺もちょーっと覗いてみよ。』 『お前ら……俺は知らないぞ……。』 いつかの光景が、窓から漏れる光で映し出された気がした。しかし光の中の俺たちは雲の影に入ってしまい、瞬く間に消えて行く。 今映ったのは、ただの幻 幻覚が見える程弱ってるのか。そう自覚した俺は、ただ誰もいない廊下をしばらく見つめてた。 職員室前の階段を上がり最上階の4階にたどり着く。 4階は空き講義室や文化部の部室が多いから、日中は誰もいない事が多い。 適当な教室の扉を開けると、これで授業が出来るとは思えない程机と椅子が散乱していた。俺はその教室に入って目の前にあった椅子に腰掛けた。 先生、心配してるかな まあ今の俺にはそんな贅沢な気持ち、誰も湧かないか。 目を瞑ると走馬灯の様に今までの出来事が駆け巡った。 高校入ってアキラとヨリヒトと出会った 席が近いのがきっかけで仲良くなって、三年間同じクラスで、毎日あの二人は言い合いしてたなあ 二人は一年生から頭が良かったけど俺だけ馬鹿だった テストの度に三人で集まって勉強して、最初は二人に怒られながら内容を頭に叩き込んだんだっけ 思い出すと目頭が熱くなった もうあのような日々は戻らないし、あの時の俺とは随分変わってしまった。 しかし三人で過ごした青春という時間が確かにあった事、 それだけは忘れたくなかった。 これ以上辛い事が起きるなら、俺はいつまでもその青春の中にいたい そう願った先に思いついたある決断 それは不気味に俺を手招いた

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