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第1話
「おはよー」
高校生活が始まって約一ヶ月。
持ち前の気さくさと愛想の良さのお陰か、咲良 葵 はクラスメイトともすぐに打ち解けることが出来ていた。
「お、咲良ちゃんおはよ」
女の子みたいな名字と名前のせいで、小学生の頃から“ちゃん”付けをされているため、その呼び方を気に止めることも無くなった。
「春輝 、部活決めた?」
「えー別に入らなくてよくね?」
前の席の小林 春輝 は、クラスの中でも特に仲のいい友達だ。
仲良くなったきっかけがある訳では無いが、歯に衣着せぬ物言いや、サバサバした性格は嫌いではない。
「でも中学の頃はサッカーやってたんだろ?」
「まぁ、一応…部活はほぼ強制だったし、別に好きでやってたわけじゃないよ」
「あーね」
「部活やるとしたら活動少ないとこか、幽霊部員になるか…」
「だよな〜わかるわ」
やりたいこともない。目標もない。
ただただ毎日を過ごしていくだけ。
俺にもいつか夢が見つかる日が来るのだろうか。
「…まぁ、いいか」
咲良はそうポツリと呟くと、クシャクシャになった入部希望表に【×】印をつけた。
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