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第2話

「咲良、本当に入らなくていいのか?」 「あー…はい」 放課後、提出し忘れていた入部希望表を職員室にいる担任に手渡すと、予想通りの言葉をかけられた。 「中学の時はバスケ部だったんだろう?」 「まぁ…そうっすね」 「続ける気はないのか?」 「俺そんな本気でやってたわけじゃないんで…」 そこそこ身長は高かったし、体力にも自信が無いわけではなかったため、中学時代から始めたものの三年次には副キャプテンもやっていた。 ただ他のチームに勝ちたいとか、一番になりたいというような思いは俺に一度も生まれなかった。 最後の試合で部員たちが泣いている中、俺は一人笑っていた。 悲しくもない。悔しくもない。 ただ“これで部活も終わりか”、というくらいにしか思えなかった。 「あ、すみません。この後塾なんで、そろそろ失礼します」 「お…おう。引き止めて悪かった」 「いえ、さよなら」 __そうは言ったものの、もちろん塾など通っていない。 ほとんど中身の入っていないカバンを肩にかけ、人気の少なくなった昇降口に向かう。 職員室から出て右に曲がると、体育館に繋がる廊下があり、その中央には購買が設置されている。その購買の向かい側に、職員室側から三年、二年、一年と下駄箱があるのだ。 小腹がすいたので帰りにコンビニに寄ろうか、家でゲームをしようか考えながら一年の下駄箱に向かっていると、ゴミ箱を漁っている人を見つけた。 紺色のジャージ…ってことは三年生か。 よく見ると上履きを履いておらず、上衣の体操着は薄汚れている。 部活か何かで汚れたのだろうか。 「…なんか、探し物っすか」 「え!?あ、…まぁ」 振り向いた男の唇には血が滲んでおり、泣いていたのか濡れた頬には柔らかい髪の毛がじっとりとくっついていた。 その姿を見て一瞬ギョッとしたものの、すぐに気がついた。 「……いじめにでも遭ってるんすか」 声を掛けた理由なんて、自分でも分からない。 「俺も探します」 西日に照らされた明るい髪が、綺麗だと思った。 ただそれだけだった。

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