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第26話
僕の性器がしゃぶられている。
それは巨大なウツボカズラみたいな(虫を閉じ込めて溶かして栄養にする食虫植物}、手足もない、ツボみたいな形状の生き物にしゃぶりつかれてた。
口というか穴みたいなモノに性器を咥えこまれ、中で無数の触手が蠢いて僕の性器をしごきたてる。
熱い濡れたそれに、僕は声をあげたいが、口の中もミッチリ犯されているから声はでない。
くぐもったうめき声が漏れただけだ。
二つに別れた巨大な竿は、口の中で別々の動きをして僕をおかしくしてくれる。
喉奥を犯されながら、上顎を擦られるなんて。
2つの亀頭から吐き出された液体を夢中で呑む。
口の端からこぼしながら。
これを後で後ろにいれられると考えただけで、ほら、またイってしまう。
二本のモノにこすりたてられるのだ。
楽しみすぎる。
僕の出した精液はウツボカズラに飲まれる。
コイツは人間の精液が好物なのだ。
僕の口を犯す、犬のような顔の化け物はまた腰を打ちつけ喉を犯す。
苦しくてたまらなくて気持ちいい。
今僕の後ろの穴を犯しているのは翼を持つ、目のない生き物だ。
コブだらけの性器で深いところまで犯してくれる。
一番奥をこじ開けて欲しい。
僕はそこを突かれて喜んで泣く。
コブがたまんない。
濡れてた僕の穴がコブだらけの性器をしめつける。
ぐならは
ぐならば
翼ある化け物が鳴いた。
意味はわからないが喜んでいるのはわかる。
僕もうれしい。
「あっちの連中は人間の男が好きなヤツらが多いんや。というより、【男の気】がな。セックスというよりは、食事の感覚やな。でも、連中もこちらで人間を食べるにはややこしい取り決めがあってな・・・そうは喰えんのや。たまーにあちらに迷ってきた男を丸呑みにしてその気を肉ごと喰うくらいやし、それはそうそうない。でも、や。あんたさえよければ、セックスという形で提供できるんや。彼らは提供したら、ちゃんと代償もくれるし。つまり、あんたは奴ら相手の定食屋になるんや」
男が僕に提案したはそれだった。
定食屋。
定食ですか。
僕。
僕は僕を定食にして提供するんですか。
でも。
まあ。
人間の男相手よりは。
良いかな、と。
僕は承知したのだった。
男はあちらにどうやってか定食屋オープンを知らせて、手配してくれたのだった。
お客様を。
僕は夜の間訪れてくる化け物に抱かれてすごす。
色んな化け物が来る。
彼らが尽きることはない。
口コミってすごい。
身体の奥まで犯されて、僕は満たされ元気になる。
変えられた身体は化け物達の精気をエネルギーに変えているらしい。
彼らは色んな物をくれる。
それは何故だか現金だったり、(どうやって手に入れるのだろう)魚だったり、果物だったり。
金だったり、石だったり。
役に立たないものもあるけど、トータルすれば僕はかなり稼いでいることになる。
男によると「定食にたいする謝礼やからそれほど貰えるわけでもないけどな、彼らはちゃんと正当と思える対価を出してくれる」とのことだそうだ。
役に立たないものやわけのわからないものは、男に送ってる。
男はメチャクチャ喜んでいる。
これを目当てに定食屋を提案したのかと疑っている。
彼らには僕を貪るのは食事らしい。
美味しい。
美味しいと食らっているのだ。
【気】を。
そして、僕は快楽と彼らの精気を喰らった上に代償までもらってる。
これは確かに僕には得だ。
でも。
辛くなる。
こうじゃなかったなら。
こうなってしまったのじゃなければ、僕にセックスの意味は変わっていたのだろうかとか考え始めると。
もう単なる欲求でしかないセックスが。
特に化け物達が去って、よごれた身体で朝をむかえた時には。
でも、そうしたら友達が帰ってくるんだ。
そして、そんな僕を抱きしめるんだ。
友達は夜働いてる。
そして朝帰ってくる。
仕事がない夜は、僕の手を握ったり、つま先を舐めたりしながら僕が化け物達に犯されるのを見ている。
そして、化け物がいなくなってから僕を抱きしめる。
毎日じゃなくてもセックスをする。
餓えが治まった身体が求めるのは、快楽じゃない。
快楽以上のものだ。
化け物の精液が零れる穴を友達が愛する。
そこでイカされて、敏感になった乳首を、優しく舐められる。
精液や唾液に汚れきった僕を、友達は当たり前のように愛してくれる。
そして、二人でイってから、風呂にはいって掃除して。
ご飯食べて、たまに二人で出かけたりして。
僕達はくらしている。
僕はもうねむらなくても良い身体になっていた。
趣味や付き合いで眠るけど。
そして、夜が来るのだ。
僕は喜んでバケモノ達に身体を開く。
友達は苦しそうに時折聞く。
あの化け物の花嫁になった方が良かったか、と。
もうほとんど化け物の僕が向こうにいった方が幸せだったのかと思ってしまうのだ。
「子供なんか産んでたまるか!!」
僕は本気でそう言う。
色んな価値観が変わったがそこは変えたくない。
「オレの子でも?」
いつだったか友達が言うから笑ったが、冗談ではなかったらしい。
真剣な目だった。
「嫌だね。僕は誰の花嫁なんかにならない。僕はお前の友達だ。お前だけの親友だ。それがいい」
そう言ったら、何故か泣かれた。
嬉しいのだと。
僕は。
友達が死ぬまでここで定食屋をするだろう。
僕は。
多分友達が死んでも、死なない。
友達よりはるかに永く死なない。
「僕はお前といたい」
それは本当だ。
でもその後は?
今は考えないでいよう。
僕の目にはもうあちら側がはっきり見えるのだ。
歩く街の角や闇に蠢くものが見えるのだ。
でも。
僕はここにいる。
友達と過ごす。
友達として。
身体をいくら重ねても。
それが僕には嬉しい。
そんな風に僕はなんとかうまくやっていた。
もう少し話そう。
物語の終わりに。
「オレが死んだら、花嫁になってもいいんだぞ、アイツの」
年老いた友達は言ったのだ。
友達はもう僕を抱けない。
長いこと抱いてない。
年老いたから。
でも、朝、僕を抱きしめることは変わらない。
犯される僕の手を握ることも。
寺からこの家を買ったからここは僕らの家だ。
長い年月のあいだに僕はまた向こう側のものになってしまって、もうこちらでは友達にしか見えない。
年もとってない。
「アイツは何度もお前を訪れているんだろう」
友達が苦しそうに言った。
友達が死に近づいたなら、屍喰いがあらわれた。
今度は最初から見えて、最初から言葉を交わした。
友達が死ぬなら嫁に来ないかと。
まだ諦めてなかったらしい。
気が長い。
「ならないよ。子供なんかうんでたまるか」
それは僕の本音だった。
友人は笑った。
思わずといったように。
「僕はお前の友達だ。お前の親友だそれだけでいい」
僕の言葉に友達は泣いた。
「友達なら他にもいるだろうに」
友達が言った。
僕は考え込む。
友達?
ああ、アイツか。
黒い服ばかり着てる痩せて陰気で性格の悪いアイツ。
「あれは友達じゃない。嫌いじゃないけど」
正直に言った。
結局長い付き合いになった。
あの男や、寺の息子さんとは。
あの男には色々迷惑もかけられた。
助けられもしたが。
あの男。
自分の恋人と化け物以外には全く興味のない男。
長年付き合ってきた男。
どんなにあちらを愛しても人間でしかない男。
でも。
嫌いじゃない。
だが友達であることは拒否した。
性格悪すぎる。
友達は笑った。
嬉しそうだった
「お前が死んでいなくなっても。僕のことをこの世界が忘れ去っても。僕はお前の友達だよ。親友だよ」
それだけが本当だった。
人間ではなくなっても。
そのうち人間だった記憶さえ忘れてしまっても。
親友がいたことは忘れないだろう。
多分、あの男のことはあの男が死んだらすぐ忘れる。
友達は、しばらく笑った後、目を開けて言った。
「愛してる」
それが最後の言葉だった。
僕は死んだ友達を食べた。
口からものを食べるのは数十年ぶりだった。
愛してる。
そう思った。
僕の友達。
友達。
もうすぐ夜が来る。
化け物達が来るだろう。
ほとんど人間じゃなくても、僕は長年様々な精気を喰らった生き物だから、特別な【気】を提供できる。
花が受粉というセックスのために蜜を与えるように。
僕も化け物達に与えることができるのだ。
僕は涙を流した。
でも、友達は今喰らって僕の中にいるし。
魂は遠い遠い先、どこかで僕を待っていてくれるだろう。
扉が開いた。
静かに目に見えないものがしのびよってくる。
今日は目に見えないモノが相手らしい。
僕は犯される。
それをよろこんで受け入れた
END
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