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インキュバス

 チュプ、チュプと吸い付く音が聞こえて、僕はふわふわな意識の中で目を開いた。 雲のような白いものに囲まれ、眼下には茶色のふわふわパーマが見える。 顎を下げるとなぜか裸になっている。 同じように裸の茶髪の誰かが左乳首を吸い、右乳首は手で摘んでいる。 「イ、や……だ」 オリベじゃないってわかったから、湧き上がる快感に抵抗して身体を揺する。 「本当に嫌だと思ってる?」 低くて甘い声の彼は鼻筋が通った綺麗な顔をしていて、今度は長い舌でチロチロと赤い粒を転がす。 「んっ、んっ」 「抵抗してもムダだよ、この世界はぼくのものだから」 彼がコンコンと下半身をすり寄せると、ビクビクンと電流が走った。 「んあっ……あ、アッ、アアッ!」 熱い息と共に大きく喘いだ僕に、ふふっと満足そうに笑う彼。 「やっと正直になってくれたね……でも、もっと夢中にさせてあげるよ」 気持ち良さで頭が痺れている僕は薄目で彼が下がっていくのを見て、身体を避けようとした。 でも、呆気なく竿を掴まれ、温かい粘膜に包まれる。  元々淡白だから、男特有の処理はしたことがない。 ましてや、フェラなんて。  ドクンドクンと拍動する音がなぜか響き、少しずつ身体中からエネルギーが集まってくる感覚がくすぐったい。 「ひもちいい?」 上ずった声に思わず、うんと答える僕。 「ここの声は漏れないから、目一杯叫んでいいよ」 ていうか、我慢できなくさせるけどとぼそっと低い声で呟いたのもちゃんと聞こえた。  彼はきっとインキュバス。 オリベはメデューサだったし、と頭の隅で冷静になる。 パワハラの次は吸血鬼と妖怪のハーフに好かれるなんて……ファンタジーだ。 あれってなんだったんだろう。 短い黒髪、そしてストレートの僕に突然コンディショナー禁止を言い付けたやつ。 髪が跳ねるようになったら、ワックスを付けろと。 それで病院実習へなんて。  「今、余計なこと考えたのわかっちゃった♪」 楽しそうに言った彼は僕の玉袋を優しく揉み出し、裏筋をゆっくりと舐めた感じがわかって引き戻される。 「あっ、ハッ……ヤァ、ア!」 今の刺激で集まっていたエネルギーの放出スイッチが入ってしまった。 「ごめ……は……はな、して」 僕の汚いものを誰かの口になんて出したくない。 でも、彼は大きく水音を立てたり、右手で激しくするのをやめてくれない。 「い、あ、あっア……アッ、アアッ、アアアアッ!」 ピクピクと身体が震えた後、ゴクンと大きく喉を鳴らす音が聞こえる。 「ごちそうさまでした」 白くて長い指にまとまりついた白濁の液を長い舌で絡め取る姿は男性なのに、艶かしかった。  「アーサ、長ない?」 頭の中に響いた声に聞き覚えがあったから、安心する。 「オ、リ、ベ……?」 そう呟いた途端に視界が晴れて、赤い長髪のオリベが微笑んでいたのが見える。 黒のスキニーに黒のカーディガン、深緑のTシャツがちらっと覗いた。 織部色だから、オリベか。  目の前には僕を襲ったばかりの彼……同じ黒服で中は水色のTシャツを着ていた。 「かなり深そうだったから……頑張ったんだから少しは褒めてよ」 満足したように舌舐めずりした顔に似合わず、不満そうな声を彼は出す。 水色、アーサ……浅葱色でアサギさんかな?

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