9 / 14

洗脳

 「わたくしには……シノちゃんだけでございます」 後頭部にキスを落とした瞬間、カチッと頭の中で何かが切り替わった。 「僕も……コハクだけだよ」 ストーブの上にある鍋がぼこぼこと言って、甘く誘う香りが部屋に充満した。 「いい子でございますね……ご褒美を差し上げましょう」 黒い矢印のような尻尾がモゾモゾと動き、僕のお尻の中へ入っていく。 「ア、ハッ、ンハッ……アアアッ」 ビリビリと感じたことのない気持ちよさに、腰が自然と揺れる。 コハク、コハク。 「前立腺でございます。シノちゃんの中のイチジクでございますよ」 僕はコハクのイチジクか。 悪くないな。 「アッ、アッ、アアッ……アッ」 もっと。 もっとやって、コハク。 「もう聞こえてはおりませんね」 では、仕上げをと、僕から離れたコハク。 コハク……離れないでよ。       「シノブゥ? どこいった~ん?」 高い声で間延びした関西弁がドアの向こうから聞こえてきた。 あれっ……なんか忘れてる気がする。 こっちの方が心地いいかも。 「シノブゥ~来いって言うたで! 」 たぶん屋敷中に響くくらいの大声で言ってる。  甲高い間延びした声。 穏やかな訛りの関西弁。 僕は思い出した。 僕を助け 僕に名前をくれた人を そして、僕の大好きな人。 「はよ来んと「オリベ! 僕はここだよ!!」」 僕も目一杯叫んだんだ。   「あっ、おったわ」 オリベが落ち着いた声色で言うのが聞こえてきたから目を開けると、目の前にオリベがいた。 「ごめんね、待たせたね」 変な気持ちは残っているけど、平然を装う僕。 コハクさんの魔力にやられたなんて、言えないや。 「ほんまやで、すぐ見せたかったんやから」 口を尖らせながら、オリベは茶色のTシャツを渡してくれた。 「かわいい! ありがとうね、オリベ」 好きな人からプレゼントされたことはないから、本当に嬉しくて微笑んだ。 「きてみて~」 ニヒヒと笑うから、すぐ着てみせる。 サイズもぴったり。 着心地も最高。  「イチジクの実は赤いんやけど、枝葉で作る染色液は茶色いんよ。これからいっぱい教えたるからなぁ」 でも、オリベは穏やかな語り口調に似合わない鋭い瞳で僕を睨む。 「オリベ……?」 戸惑うように名前を呼んだ口は閉じなかった。 その口にすぐ白蛇が伸びてきて入り込んだから。 「ごめんなぁ。なんか俺の大切なシノブゥにいらんもん詰まっとるみたいやからぁ、お掃除さしてな?」 もう一匹はお尻の穴へ突っ込んでいく。 「アッ、アッ……アアッ」 喉の奥と肛門もウネウネと進むのが苦しい。

ともだちにシェアしよう!