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一緒に息をして生きていきたい
ギャアア!
けたたましい叫び声が聞こえる。
ガビュガビュ
それを齧る音が2回すると、身体が軽くなった。
解放された僕は自然とオリベの胸の中へと納められる。
「ごめん、俺のせいやわ」
強く、苦しいくらい抱きしめてくれるオリベにやっぱりこの人だと確信した。
もう惑わされない。
「僕にはオリベだけだよ」
自分が言った言葉で覚悟を決める。
僕のすべてはオリベのものだ。
ふとオリベを見ると、白くなっていた髪がなぜか黒く変わっていた。
どぶのような穢れた黒。
「僕の血、吸っていいよ」
僕のせいだから、必死に訴える。
それなのに、オリベは苦笑いをする。
「俺、今お前に殺されかけたわ……」
胸を右手で押さえるから、ごめんと謝ると、ええのと口角を上げる。
「その前に片付けたい案件があんねん。その後でええか?」
優しく頭を撫でるオリベにうんと言うと、軽く唇にキスをくれた。
「絶対に損はさせんし、宇宙一幸せにしたるから」
ああ、敵わないな。
「でも、まずは……あいつやな」
ボソッとつぶやいた瞬間に、目の前からオリベが消える。
「こんのっ、クソあくまぁぁぁぁ!!」
「ひぇぇ!? 許しておくんなましぃ!」
コハクさんの部屋から怒号と悲鳴が聞こえてくる。
「オ、オリちゃん。落ち着いて考えてくださいませ。シノちゃんは『神田川』のメンバーになったのですよ」
「だから、なんやボケェ」
「シノちゃんはみんなのものでございます。独り占めしてはなりませんよ?」
「だからって略奪すんのはええんか? ああ"?」
あの……廊下に全部漏れてて、恥ずかしいんだけど。
「なんなん? めっちゃうるさいんやけど」
気だるそうな低い声と頭に何かが刺さった感じを覚える。
「いやぁ、2人ともベタ惚れなんだね。こんなか弱い人間に」
頭の上から甘くて低い声が骨振動で伝わってきて、空気がほわほわしてきた。
「棚ぼたで襲おうとするの止めてもらいます? アサギさん」
危ない。
インキュバスも要注意だ。
「あっ、バレた? 大チャンスだったのに」
ちぇっと、わざとらしい舌打ちをするアサギさん。
なんて言っているうちにコハクさんの部屋はおぞましい音ばかり響くようになってきた。
一応、自主規制しますね。
「メデューサとアドラメレクの闘いってすごいですね」
「どっちも元は同じ悪魔やから。ああ、怖い怖い」
僕を力強く抱きしめるから、嘘か本当かわからないや。
「まぁ、それだけ愛されてるってことさ。そろそろ、自分がどれだけ魅力的なのかを自覚しなよ? シーノちん♪」
アサギさんがふふふと愛らしく笑うから、僕もふふふと笑ってみる。
僕にはまだ生きる意味がある。
みんなのために……オリベのために。
一緒に息をして生きていきたいな。
ありがとう。
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