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エロシーンサンプル②

 日曜日。  殆ど毎日六時起床、終電帰り(たまに間に合わない)の六連勤を終えてやっとこさ迎えた休日。  本当はずっと放置してしまった條と出かけたり彼のために時間を使いたかったのだけれど、土曜日帰ってきてから泥のように眠って目が覚めた頃には太陽はすっかり西に沈んでいるところだった。  慌ててリビングに向かうと夕食の準備をしている條が振り向く。 「お、起きたか寝坊助。ったく、こんな時間まで寝てるなんてまだまだ若いなー。俺はもうどんだけ疲れてても朝七時には目が覚める身体に成っちまったよ。それはそうと、今日は仕事で疲れたお前のためにスタミナ料理を……っうお?!」  こんなに毎日放っておいてしまっているのに変わらず接してくれる彼を愛しさ余って抱きしめた。  いや、彼の方が体格がいいから飛びついたみたいになるんだけど。  となりのト〇ロで見たな、こんなシーン。  なんかの奇跡が起きてこのまま飛ばないかなーなんて思いながらふいと顔を上げると、落としかけたお玉を慌てて握り直したらしい彼とばっちり目が合う。 「なんだなんだ、どうした。怖い夢でも見たか?」 「……ごめん」 「? なんで謝ってんだよ」 「今日、一緒にどっか行こうと思ってたのに、こんな時間まで寝ちゃってて」 「ああ、なんだそのことか。気にすんな。別に約束してたわけでもないし」  もう夕方だ。  あと十数時間もすればまた彼を置いて仕事に行かなければいけなくなってしまう。 「はあ……仕事行きたくない……疲れた……」  思えば、彼の前でこんなにはっきりと弱音を吐くのは随分久しぶりだった。  というか、結婚してからは初めてだったと思う。  だからだろうか、彼は一瞬動きを止めて、まるでその言葉を待っていたとでも言うかのように嬉しそうに、しかしどこか悪戯っぽく口角を持ち上げた。 「じゃあ、行かなきゃいい。有給、全然使ってないだろ」 「それは……まあ、そうなんだけど」  そう、ではあるんだけれど。  今自分が休んでしまったらプロジェクトが……なんて、言い訳か。 「ま、とりあえず飯にするぞ。腹減っただろ」 「……うん。ありがと」  その日は結局、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒にテレビを観ただけで日が暮れた。  今まで当たり前だった日常に久しぶりに帰って来られて個人的には大満足だったのだけれど、やっぱり條には申し訳ない。  今度の休日こそ一緒にどこかに行こう。  折角だし、一泊でプチ旅行をしてみるのもいいかもしれない。  今度こそ有給もぎ取ってやる、なんてそんなことを思いながら、普段よりもちょっと遅めの時間に條と一緒に寝室に向かった時だった。 「空」 「ん? ……っ?!」  突然視界が反転したと思ったら両手首をベッドに押さえつけられ、驚きで開いたままだった口内に彼の長い舌が滑り込んでくる。  太腿の間に膝が容赦なく割り込んできて、暫くお預けを食らっていたその部分に急に舞い込んだ軽い刺激に身体が大きく跳ねた。 「んっ、んんうっ……ふっ、ん」  貪るように口内を乱暴に犯され、逃がさないと雄弁に語る金色の瞳に絡めとられ、次第に身体から力が抜けていく。  やっと離れたと思った彼の真っ赤な舌はどちらのものか分からなくなった唾液でぬらぬらと怪しく輝いていた。 「っ、じょう、今日はちょっと……僕、明日も仕事が」  制止を聞くことなく彼の舌はそのまま首筋を這う。  ぞくりと腰のあたりからせり上がってくる快感に身を任せたいと思う反面、明日のことを思うと憂鬱になる。 「黙ってろ。どんだけ我慢したと思ってんだ」  その言葉に固まった。  やっぱり我慢してくれていたんだ。  気を遣わせてしまったという負い目もある……ここで無下にしてしまうのはあまりにも申し訳ない。  実際、自分も一週間ものお預けで随分と溜まっていたし。 「……あんまり夢中にならないでくれよ」 「それはどうかわかんねえな」  にたりと持ち上がった口元から鋭い八重歯が覗く。  あ、これ今日離してくれないやつだ。  明日を憂鬱に思いながらも、手首を締め上げて離さない柔い肉球にきゅんとする。 「いいから黙って抱かれてろ」  低く、唸るような声。  どうにかなってしまいそうになるそんな声を発した唇は、ゆっくりと下がっていき、丁度胸のあたりに服の上から柔く舌を滑らせた。 「っふあ♡」  服越しに彼の舌が擦れて、思わず声が漏れる。  あ、やばい。どうしよう。  これだけで……。 「おいおい。まだ何にも始まってねえのに、もうこんなになってんじゃねえか」 「ひっ、ん」  意地悪っぽく笑った條は、薄いTシャツ一枚越しにぴんと立ち上がっている突起を指先で弾く。  布越しに少し弄られただけでこんなになってしまっては、一体これからどうなってしまうんだろう。  いやまあ、ぶっちゃけ今日はどうなってもいいかなあなんてちょっと思い始めた。 「じょ、う……焦らさないで……っ」  優しくされるのも嫌いじゃないけれど、それよりも、ちょっと強引にされる方が好きだったり。  あれ?  もしかして僕、マゾっぽい?  違うからね!  條にだけだから!

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