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俺と彼の関係(1)

「くっ…うっ…ああっ」 「相変わらずいい声で啼くねぇ、俊樹。 ココはどうだい?」 「あっ、止めっ、あっ」 「くっ、そろそろ俺も限界だ。 ほら、イくぞ!」 嫌なのに。こんな抱かれ方は嫌なのに。 愛情のカケラすらないセックス。 お互いに割り切った関係。 哀しみに彩られた心とは裏腹に、悦びを知っている身体はヒクついて、彼を奥まで迎え入れている。 破裂音が木霊する白い部屋。 そして… 「ああっ」 「ぐっ」 お腹の奥にじわりと熱い物が溜まっていくのを感じながら、大きく息を吐いて必死で酸素を拾う。 自分の吐き出したものを拭こうと、ティッシュボックスに手を伸ばしかけた。 「動かなくてもいいから。」 軽やかな音を立てティッシュを抜き取ると、慣れた手つきで俺の胸や腹を拭いてくれた。 「ありがとう。」 「どういたしまして。俊樹、抜くよ。」 ぬちゃ、という音と一緒に、さっきまで俺を翻弄していた楔が、小さく形を変えて出て行った。 突然訪れた喪失感にため息をつくと、スキンを外してゴミ箱に入れた彼が、微かに笑った。 「今度いつ会える?」 「分からない。社長の結婚式も近いから、その準備とかもあるし。 あ、先にシャワーどうぞ。」 「つれないねぇ。そうやってまた1カ月くらい放置するのか? 俺の有り余る性欲はどうしてくれるんだ?」 「俺以外にもお相手がいるんじゃないんですか? 引く手あまた、って専らの評判ですよ。」 「俊樹と出会ってからはお前だけなんだけど。 俺も随分と信用がなくなったもんだな。 …お言葉に甘えて先にシャワー浴びてくる。」 広い背中がバスルームに消えた。 はぁ…まだ快感が身体中に残っている。 あんなこと言って怒らせてしまったかも。 仕方ない。俺達はただのセフレだから。

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