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俺と彼の関係(2)
彼は…取引先の社長、名前はニルス・アンダーソン・透。
祖母を北欧スウェーデンに持つクォーターで、栗色の柔らかな髪と印象的な青い瞳で人を惹きつける。
彼と会ったのは、とあるパーティーで、俺は満の付き添いで出席していた。
元々、満と親しかった彼は、満と過ごせたのが余程嬉しかったのか、その日ご機嫌でハイピッチで飲んでいた。
「…飲み過ぎた…ヤバい…吐きそう…」
「ほらみたことか。自分の加減を知れよ。
俊樹、悪い。頼んでもいいか?」
満は、その時主催者に頼まれごとをしていて、どうしても手が離せなかったのだ。
「承知いたしました。
社長、トイレ行きましょう。
少し我慢して下さいね。」
「あぁ…すまない。
俺は今日ひとりで出席したから…」
「喋らないで。ゆっくりでいいですから歩けますか?」
そうして、吐き続ける彼を介抱し、結局家まで送って行く羽目になってしまった。
その頃にはもう、割と平常に戻っていて、顔色もすっかり良くなっていた。
「黒原君、申し訳なかったね。
ああいう場で楽しく飲めることなんて今までなかったから。
ちょっと調子に乗ってしまったよ。」
「いいえ。お役に立ったなら何よりです。
さっきドラッグストアで買ったのですが、一応薬を置いていきますね。」
「え!?ありがとう。
君みたいな秘書がいて、満が羨ましいよ。
どう?ウチに来ない?
今より破格の待遇で迎えるよ?」
「恐れ入ります。
けれど、私は今の会社が大好きで、骨を埋める覚悟で働いておりますので…お気持ちだけありがたくいただきます。」
「ははっ、金山の社員は義理堅いんだね。
とにかく今度お礼をするよ。
また連絡するからその時は付き合ってね。」
「いえ、お礼は結構です。
当たり前のことをしたまでのこと。
どうぞお気になさらず。お大事になさって下さい。
では、これで失礼いたします。」
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