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俺と彼の関係(3)
それから一週間後――
満と檸檬君が仲良く先に帰り、後片付けをしていた時だった。
ノックの音と共に入って来たのは…アンダーソン社長!?
「先日は本当にありがとう。
迷惑を掛けて申し訳なかった。」
「いいえ…あの、どうやってここに?
受付からの内線もなかったのに…
申し訳ありません、社長は本日もう退社したのですが…」
「あー、俺、顔パスだから。
それに満じゃなくて、君にお礼をしたくて来たんだよ。
ね、今夜空いてる?」
「恐れ入りますが、お礼は結構です。
先日申し上げたはずですが。」
「晩ご飯まだでしょ?
美味いご飯食べさせてくれる所があるから、付き合ってよ。
勿論、俺の奢りで。ね?」
色男はズルい。
微笑んでウインクされるだけで胸がときめいてしまう。
日本人離れした彫りの深いシャープな顔立ち。
整った鼻筋にブルーの瞳。
そんな男 に誘われたら、ふらっと行ってしまうよな。
そう。俺はノンケではない。
いわゆる『ネコ』と呼ばれる立ち位置だ。
プラトニックな恋愛ばかりで、実際に誰かと付き合ったこともないけれど。
満がヤンチャな頃…夜の街に繰り出していた時も、俺は絶対に誰ともそういう関係にはならなかった。
本当に、お互いに愛し愛されるそんな相手とじゃないと嫌だ、なんて乙女チックな古臭いと言われる考えだったからだ。
そうかと言って、満は全く恋愛対象にはならなかった。アレは無理だ。
でも…この年になるまで前も後ろも童貞だなんて、恥ずかしくて誰にも言えない。。
この男がアッチのひとだと、噂では色々と聞いている。
取っ替え引っ替え、かなり遊んでいるらしい。
ひょっとして俺の童貞臭に気付いたのか!?
まさかまさか。
でも…食事くらいならいいか。
目の保養にもなるし。
一食分浮くな。
いやいや、タダより怖いものはない。
俺が考えを巡らし返事をせずに黙っていると
「さ、行くよ!」
俺の鞄を引っ掴むと、手を取って部屋を出ていこうとする。
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