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俺と彼の関係(4)

「ちょ、ちょっと!待って下さい、離して!」 「はい、鍵出して!はい、戸締りOK! あ、誰かに見られたらマズイのか?」 そうひとり言を捲し立て、やっと手を離してくれた。 強引だ。このひと、滅茶苦茶強引だ。 満も大概だけど、このひとはそれを上回る。 こんなひとの秘書なんて、胃薬が手放せないんだろうな。 いくら大金を積まれてもゴメンだ。 それにしても…いくら酔っ払いの介抱をしたくらいで、ここまでこんなことしてくるか? まさか…俺のこと、調べた上で? いや、それはないだろう。 誰にも気取られないように、そう、満にさえバレないようにやり過ごしてきたんだ、心配はない。 はぁ、何にせよ、相手は大事な取引先の社長だ。 下手な態度は取れない。 半ば諦めた俺は 「では、遠慮なくご馳走になります。 それで貸し借り無し、でよろしいですよね?」 彼は、ふわぁっと花が咲いたような笑みを見せ、頷いた。 ズルい。イケメンがそんな顔をしたらひとたまりもない。マジな恋愛経験値のないチョロい俺は落ちてしまう。 ダメだ、ダメだ。 しっかりしろ、俊樹。 相手は顔見知りの『取引先の社長』。 会社や満、金山家に迷惑をかけてはならない。 残った理性を振り絞ると、俺もにっこりと挑戦的に微笑みを返した。 まるでエスコートされるように連れて行かれたのは、和食の店。 奥座敷の個室に案内され、ちょっと戸惑う。 「コースにしたんだけど、君は好き嫌いなかったよね?」 「ええ。どうしてそれを?」 「前に満と話した時にね、聞いたんだ。 うちの秘書殿は偏食で、一緒に食事をしても楽しみが半減するんだー、なんて愚痴をこぼしたら、満がそう言ってた。 まぁ、お品書きを見てよ。」 「…はい。」 うわぁ…高そうなメニュー… それに、俺の好物ばかり並んでいる。 何で?それも満に聞いた?

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