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俺と彼の関係(5)
彼を見ると、どんなもんだい、と言わんばかりのドヤ顔で
「どう?気に入ってくれた?
人払いしてあるから、ゆっくり楽しんで食べようよ。」
「…正直、私の好物ばかりです。
お気遣いありがとうございます。
遠慮なくいただきます。」
「うん。そうしてくれれば俺も嬉しい。
日本酒が飲みたい気分でさ、付き合ってよ。
さ、まずは一杯。
あ、大丈夫。今日はセーブするから。」
「では、私が。」
立ち上がり、お銚子を持つと側に座る。
いい匂い。やっぱりこの人、滅茶苦茶いい匂いがする。
実は介抱した時もクラクラしたんだよな。さっき部屋に入ってきた時も。
このフレグランスは何処のだろう。
そんなことを考えながら注ぎ終えると
「次は俺。」
と席に座らされ、注ぎ返された。
「もっ、申し訳ありません!
社長にこんな」
「今夜は無礼講。気にしないで。
さ、俺を優しく介抱してくれた君に乾杯だ。」
あー…これ、普通の女の子なら即お持ち帰りだ。
何でそうサラッとキザな台詞が出て、それが嫌味なく聞こえるんだろう。
流石に異国の血が混ざると何でもスマートに振る舞えるのか。
口をつけた日本酒は、香りも口当たりも良くて空きっ腹の胃に染みていく。
悪酔いしないように気を付けなくちゃ。
もう、こうなったらボロが出る前に、美味しいもの食べてサッサとトンズラしよう。
先付の小鉢に手を伸ばし、口に運ぶ。
「…美味しい!」
「そう、口に合って良かった!
メインの料理も楽しみにしててね。
ところでさ、満の結婚相手ってもう1人の秘書君だろ?
よく金山の御大 が許したね。
大変だったんじゃない?」
このひとも…興味本位で聞きたいクチなのか?
俺から何か聞き出して、取引きのネタにしようとしてるのか?
満と仲の良い経営者じゃなかったのか?
少しでもイケメンだとか、心が揺れた自分がバカみたいに思えてきた。
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