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結成まであと1年 1
中学に上がる少し前、モデルの仕事での写真が『イケメン過ぎる美少年』と添えられて、電子の海を流れ、何十万の人をときめかせた。
高校に上がってすぐの数ヵ月前、事務所の先輩のドラマ撮影を手伝いに行ったら、急遽ちょっとした役で出演し、監督に気に入られて何回か役をもらった。
そして数日前、前述のドラマが放送されると『あのイケメンは何者なんだ? 詳細求む』と一部界隈を騒がせ、電脳空間の魔術師たちによって『イケメン過ぎる美少年』の写真があっさり発掘された。『イケメン過ぎる美少年』が期待以上の成長を遂げてあのイケメンになったのだということに、世間は気づいてしまったのだ。
そんなイケメンこと、おれの幼馴染は、今や事務所の養成所で誰よりもデビューと活躍を期待されている。当然のことだ、とおれは思う。
おれの幼馴染――雲雀の魅力が、ネットやテレビの力で、より多くの人に伝わっただけだ。
だって、雲雀は元々、養成所でも学校でも人気者だもん。
じいちゃん譲りの亜麻色の髪と青みがかった灰色の瞳。日本人離れした色がよく似合う綺麗な顔立ち、クールな眼差し。見た目もいいのに、養成所ではダンスも歌もトップクラス、学校では成績優秀品行方正。それでいて優しくて親切なので、好きにならない人はいなかった。
もちろん、おれも大好き!
生まれた時からずっと一緒にいる、かっこ良くて優しくて、自慢の幼馴染だ。
そんな幼馴染が珍しく悩んでいるのはまさにデビューのことだった。雲雀は歌もダンスも芝居もできる。だからアイドルとしてデビューすることは決まっていた。
だけど一緒に組む相手が見つからないんだって。
繰り返すけど、雲雀は人気者だ。
誘ってくれる相手がないわけではない。雲雀と仕事をしたい人はいっぱいいる。養成所でも、もうデビューしてる先輩グループでもそうだ。きっといろんな人から誘われてるはずなのに、なんでか決まらない。
いっぱい友達がいるから、悩んでるのかもしれない。雲雀は優しいけど、とても誠実だから、適当な返事はしないんだ。
そういうところも好かれる理由なんだろう。断ったからといって、雲雀を嫌いになる人はいなかった。
雲雀の相手はどんな子がいいんだろう? 今日も雲雀と一緒に帰るから、また話してみよう。養成所にいる子達のリストも作ったんだ。
実はおれも最近、雲雀と一緒に雲雀のパートナーになる人のことをいっぱい考えていた。養成所でダンスや歌、芝居を学んでる雲雀と違って、おれはプロデュースやマネジメントについて勉強している。
そのことが少しは力になれるといいなぁ。
今日もいろんなことを思い描いて、ノートにまとめたんだ。夢中になりすぎて気付いたら、雲雀のお迎えに行く時間が遅くなっちゃった。
でも、雲雀が誰かと一緒に輝く舞台に立つ姿。
想像するだけでドキドキする。
ドキドキをいっぱい書き込んだノートを、ドキドキに紛れて少し痛む胸にぎゅっと抱きしめて、おれは雲雀のもとに急いだ。
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