1 / 6
マックside 愛しの8人目
「はぁ……」
誰もおらんバーカウンターを見つめながら、閉まっとる間に置いとる1人用ソファに座る俺……マック。
日中のバーは経理担当やけど、本業の始末屋では一番の先輩やし、一応ブレーン。
今は戦闘班の狙撃手とファーストペンギンから呼び出されるのを寝ずに待ってんねん。
まぁ、元々寝れへんけど。
あとは情報班のエースの帰りも待ってる。
色男やから、男も女も惹き付けんのはええねんけど、悪い運まで引き寄せるからな。
ああ、むっちゃ心配やわ。
でも、一番の心配事はずっと変わらへんねんな。
「由希仁 ……お前はどこにおんねん」
上を向いて、ほっと息を吐いてみるけど、白い靄がぽっかりと浮いただけ。
虚しくなった俺は黒のスーツの裏の胸ポケットから古びた写真を取り出す。
控えめにピースする奴やダブルピースの奴、睨む奴もおる中、天使の微笑みを浮かべてグッドサインをする黒髪の男の子……それが如月由希仁 。
俺、ジャッキー、トッポ、ジョニー、ガム、エース、アーセナル……今いる7人を手繰り寄せた重要人物。
まぁ、愛しの8人目ってとこか。
俺を含めて8人全員、同じ児童養護施設の出身。
生まれてすぐに捨てられたり、虐待から保護されたり、家族の不幸により引き取られたりと理由は様々。
性格もバラバラやのに、気が合うことはある。
みんな、由希仁のことが好きだったんや。
あいつは高校入学と同時に喫茶店に住み込みのバイトを始めた。
たまたま、俺の仕事先と目と鼻の先やったから、親代わりによう様子を見に行ってたんやわ。
あいつ、人懐っこいから、オーナーの老夫婦にもお客さんにも愛されててな……なにより、本人が楽しそうやったんよ。
でも、10年前にいなくなってもうた。
老夫婦はメッタ刺しにされた状態で死んでいたらしいけど、あいつの姿は見当たらんかったって。
噂では、地上げ屋と揉めてて、大元のヤクザが手を出したんちゃうかっては聞いたけど。
俺も色々あって、仕事辞めてすぐ始末屋になったからわからへんねんな。
ずっと、探しとるんやけど……悔しいわ。
もし、苦しんどるんなら助けたるから。
せめて生きてるかどうかだけでも教えてくれや。
なぁ、由希仁。
「会ったら抱きしめてやりたい……嫌がられても離したらんし」
俺は写真の由希仁の顔を人差し指で軽く撫でる。
「みんな、待っとるで」
一番は俺やけど……なんて口が避けても言わんし。
俺って、よくクールに見られんねんけどちゃうねん。ただのシャイやねんで。
せやから、会っても感情を爆発させることは絶対にないわ。
でも、むっちゃ会いたい。
「はぁ……」
ため息止まらんのはもうおっさんやな。
ともだちにシェアしよう!