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トッポside カチン

 施設にいる時もそうだった。 いつもびくびくしていたんだ。 自分にも自信ないし、周りの空気にも敏感になっていたし。 でも、上手く出来ないし、運が悪いし。 ダメダメ人間で静かに泣いていたんだ。 ジャッキーに励まされていたけど、ジャッキーは元気で器用だから、どこか羨ましかった。 そんな時に由希仁に出会った。 何故か、ボクにすぐ懐いてくれた。 ボクを頼ってくれたんだ。 ボクが突き放しても、いつの間にかそばにいてくれた。 由希仁はボクにとって、陽だまりだったんだ。 それに、由希仁だけはボクのことをあるあだ名で呼んでくれていた。 ボクは餅が好きだったから、冗談で呼んで?って言ったら、ずっと呼んでくれていたな。 ああ、会いたいよ。 「由希仁に……会いた、かったな」 ボクは静かに目を閉じて俯いた。  「僕が死なせると思う? カチン」 ボクはびっくりして目を見開く。 見えないけど、誰かがすぐにわかったから。 「別に僕はカチンを殺しに来たんじゃない……もちろん、みんなも」 するすると覆われていたものが解かれ、眩しくて目をギュッと瞑る。 「あっ、ごめん……これでいい?」 耳に棒が掛けられ、頭には柔らかいものが被せられた。 恐る恐る目を開けて触れてみると、太い縁のメガネとカラフルな野球帽だった。 この帽子は施設の時から被っている大切なものなんだ。  「由希仁……?」 ドキドキしながら振り向くと、狐面で全身黒ずくめの服の人が立っていた。 「素の姿は事情で見せられないけど、うん。僕、由希仁だよ」 高い声でふふっと笑うのはあいつしかおらん。 「由希仁!」 ボクは飛びつくように抱きしめた。 「どこいってたんや、アホ! ボケナス!!」 嬉し泣きなのに、暴言を吐くしかないボク。 「ごめん、いなくなって」 ボクより大きい手で頭を撫で、自分の身体に押し付ける由希仁。  「ねぇ、カチン」 少しトーンを下げた声で呼ぶから、ボクはびくびくしながら上を向く。 「1つだけ、お願いしていいかな?」 「ボ、ボクに出来るなら……いや、何でもやったるから!」 離れんで。 いなくならんで。 ずっと一緒にいてくれ。 それが叶うなら……命を懸けてもええよ。  「僕を助けて」 辛そうに言う由希仁。 それがいなくなった原因なんだな。 「もちろん、助けたる……でも、1つだけ条件があるで?」 面の向こうの顔がピクリと震えた気がした。 「今のボクたちは最強なんだ。だから、みんなで助けるから依頼してちょうだい」 ボクらは立派な始末屋なんだから。 「わかった、お願いします」 由希仁は礼儀正しく頭を下げた。 「ごめん、やっぱりもう一つ」 ボクは意地悪な笑みを浮かべて、立ち上がる。 不思議そうに首を傾けた耳に囁いたんだ。 「ええね……やろう」

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