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仮病 ①

 なんとなく勉強はやりたくなくて、友達とふざけてばっ かりいた。空気を読んで流されているだけの毎日は楽で楽 しい。だから、今日も疑問に思うことは何もなかった。 「酒飲んでみたくね?」 ふぅん、面白そうだな。いつも通り何も考えず答えた。  決行は明日の朝。背が高くて同じクラスの誰よりも大人っ ぽい藤城がコンビニに行ってビールを買いに行く。それを 先生はまだ来ていない教室でみんなで飲むらしい。朝は苦 手だけれど明日だけは遅刻しないで学校に行きたい。 翌朝、予定通り教室にはビールが準備されていて、仲良 く飲んだ。ただただ苦くて一口だけでお腹いっぱいという 感じだった。みんなも美味しいとは思わなかったらしく買 ってきたビールはほとんど残っている。 バレないようにトイレに持っていって流した。何度も何 度も水道代の無駄になるほど入念に。秘密を共有している と言う事実がいっそう心を沸き立たせた。空き缶は一人一 つ通学カバンのポケットの奥に忍び込ませた。 朝のホームルームが始まって先生が教室に入ってきた。 先生の話が始まっても今朝のことが話題に上がる様子はな い。今のところ悪事は暴かれていないようで一安心だった。  しかし、僕の体の様子は違った。原因はわかっている。  体が熱を出したみたいに暑い。誰の声も耳を通り抜けては鼓 膜を揺らすだけで意味が伝わってこない。このまま授業を 受けても少しも理解できないだろう。とはいえ、毎日友達 と騒いでいるか寝ているかの自分にとってはあまり関係の ないことだ。

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