43 / 130

猫殺し 14

 「お前・・・何言うてんの?僕以外に触らすの?」  僕は震える声で言うた。  僕が死ぬかもしれんし、コイツが死ぬかもしれんけど・・・もうめちゃくちゃにしたろうかと思った。  一緒に死ねたらそれでもいいとか思ってしまった。  コイツを誰にも触らせたない。  震えながら抱きしめた。  その細い喉に歯を当てて、食い破ってやりたいと思った。   実際歯は当てた。  でも・・・出来るわけもなかった。     嫌や。  嫌や。  「嫌や。他のヤツに触らせんなや。僕だけや・・・」  僕は泣きながら言うた。  鼻水だらけの顔をアイツの首筋になすりつける。  アイツはため息をついた。  「・・・お前は潔癖なとこあるから・・・そういうの嫌いやろうけどな・・・オレはお前が助かるなら、なんでもするで。・・・お前に嫌われて・・・お前がもうオレと一緒におりたないとしても」  アイツは言い切った。  「嫌わんといて欲しいけど・・・しゃあないやん」  震える声が言った。  「二度と会うてくれへんなっても・・・しゃあないやん」  アイツが僕をだきしめた。  震えていた。  コイツ。  コイツ。  嫌われないこと位しか僕に望んでないと思っていた。  僕に好かれるとさえ思いもしないことは知っていた。  でもそれどころやなかった。  コイツは僕のためになら・・・僕に嫌われてもいいのだ。    コイツ。  コイツ。  何一つ望んでないんや。  本当に何一つ。    コイツは僕を思うのに、僕の気持ちなど必要としていなかった。  人を思うのに見返りなど何一つコイツには必要じゃなかった。    お前。  お前。    「嫌いになんかならん。絶対にならん・・・」  それだけを言った。  これだけしかまだ届かないから。    「怒ってしまうことがあっても・・・それは嫌いになったからやない」  分かって。  それだけでいいから分かって。  「・・・僕は絶対に大丈夫やから・・・僕を信じて?無茶 せんといてくれ・・・」  僕は懇願した   「・・・信じる?」    アイツが泣いた。  「信じて・・・僕を信じて・・・お前が信じてくれたら僕は絶対大丈夫やから・・・」  僕は強くアイツを抱きしめた。    二人でヨロヨロしながら抱き合って、家に入った。  アイツの部屋に行く。  僕は汚れた服だけはなんとか脱いだ。  もうついでにパンツも脱ぐ。     「お前・・・何考えて・・・死ぬやろ」  アイツが真っ赤になって言う。  あんだけ抱きつぶしてんのに、恥ずかしがるんが可愛い。  一回やってるとこ録画して、それを見せて泣かせてみよう。  絶対可愛い。  めちゃくちゃエロいアイツを逃げないようにしてみせてやりたい。  アイツがもじもじしているし、赤と黒がキーキー声でがなりたてているのを見て僕は笑った。  「いくら僕でもせんわ。・・・死んでまう。服汚れてるから・・・このまま布団にはいれんやろ。悪いけど、風呂まで蓉入れんのや。もう死にそうや。寝かせてくれ」  僕は言った。  「ほんなら布団持ってきてもらう・・・赤、布団・・・」  言いかけたアイツの腕をつかんで、アイツの布団に一緒に潜り込む。  「一緒に寝たい。寝るだけや。いつもやったらそんなこと絶対出来へんけどな・・・今の僕は世界一の紳士やで?勃てへんからな」    僕はアイツを腕の中に閉じ込めて笑った。      アイツは真っ赤になりながら大人しく僕に抱きしめられていた。  アイツのパジャマのボタンに手をかける。  「・・・そんな言うて、何してんねん・・・あかん、お前本当に死んじゃうやろ」  珍しくアイツが抵抗した。      「ちゃう。せん。でもお前の肌に触れて寝たいんや」  僕は言った。  コイツの肌を体温を感じてねむりたかった。  アイツは自分からパジャマを脱いだ。  抱きしめて首筋の匂いを嗅いだのは覚えている    滑らかで僕より体温の低い肌が僕の肌に触れた。  この肌は僕がアイツを感じさせる度に・・・熱くなる。  熱く汗ばんで・・・それが好き。  でもこうやって触れるだけでもそれが好きだと思った。  そっからは・・・抱きしめている大事な存在に胸が痛くなりながら・・・僕は気絶したのだった。    

ともだちにシェアしよう!