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殺意 2

 お前の存在はくだらない。  お前は仕方なくここに存在させてもらっているのだ。  お前は誰にも愛されない。     お前は役立たず。  お前は愚か。  あの女がそう教え込んできたことの全てが、どこにいてもつきまとう。  誰かに話しかけられれば、おどおどと笑い、くだらないことを言わぬように言葉少なに話を返す。  へらへらと笑い、誰にも逆らわない。  人の前に立つと「みっともない」と笑われているのではないかと怯えてしまう。  あの女がそう言う声が聞こえる。  ヘッドホンから流れる音楽だけが外界からを自分を切り離し守ってくれるのでヘッドホンと音楽だけは手放せない。  呼吸が苦しい。  世界が歪む。  音楽から身を離し、自分に意識を向けてしまえば、耐えられなくなる。  だから猫を殺す。  すると世界の色が蘇る。  猫の苦痛の声。  猫の血の色。  焼かれる臭い。  茹でられて変色する目の色。  悲鳴は世界を吹きとばす爆弾のようだ。  血の色は新たに始まる世界の色のようだ。  臭いはこの世界を新しく変える刺激だ。  熱が変えるその目は世界のために捧げられた犠牲のようだ。  そう。  生け贄だ  この少年という神に捧げる生け贄なのだ。  生け贄を殺せば生きられる。  生きている感覚を得られる。  殺している間だけは、生きている感覚に満たされる、  全ての色が鮮やかに見える  臭いも  触れるものの感覚も。  原色の光に貫かれるかのよう。  生きていきたい。  とるにたらないものであっても生きていたい。  それでも生きて生きたい。  そのためには・・・猫という犠牲が必要なのだ。     今日猫にすることを考えて、股間が熱くなった。  まだ時間じゃない。  ドアに鍵をかけて、ベッドに横たわり、ズボンと下着をおろした。    目を閉じる。  心の中で猫を切り刻んだ。    耳からだ。  傷など漬けられないように手足は縛ろう。  そして尻尾。  鉄板を切るためのハサミはそのために買った。  殺すヤツは決まっている。  最近現れた白いのだ。  人に慣れている。  マタタビに弱く、抵抗がなくなるのも試しているからわかってる。  アレにしよう。  熱く堅くなっているそこに触れる。  猫の想像で抜こうと思っていた時、頭によぎったのはあの獣だった。  美しい獣。  同じ年頃の少年のような姿をした獣。  裸にすれぱ・・・きっと見事な身体なんたろう。  少年は思った。   ズクン  股間がさらに熱くなり大きくなる。    股間だけではなく、最近覚えたソコに指がいく。  穴の周囲を撫でてしまう。  ベッドの下に手を伸ばし、コッソリ買ったローションを取り出してしまう。    心の中で獣を裸にした。  美しい身体だだろう。  その身体を舌や手で楽しむ。  柔らかい筋肉に触れ、弾力のある肌を楽しむ。  綺麗に割れた腹筋を舌でなぞろう。  獣はこんな俺に触られて嫌がるだろうか。  少年は思う。  嫌がるだろう。  だけどこれは幻想だ。  見事な胸の筋肉を撫でよう。   その乳首を舌で楽しもう。    嫌がりながらも獣の乳首は立っている。  甘く噛もう。    ああ、抵抗されないように手足はしばっておこう。    一瞬優しく獣に抱きしめられる幻想を見た。  その幻想に胸が痛んだ。    あまりにも甘かったから。  でも、幻想でさえそれを望めず、少年は獣の手足をしばった。  その代わり、獣の身体を丹念に愛撫した。  全身にキスして、舌を這わせた。  それは決して乱暴ではない。  甘くさえある愛撫。    獣は幻想の中でさえ、そんな少年を嫌悪した。  唸り、歯をむき出し、罵声をあびせる。  舌がどこかをなぞる度に大声で怒鳴られる。  少年はその幻想に微笑む。  「それでも・・・反応しているくせに」  少年は幻想の獣に婉然と囁く。  そこは堅く勃起していた。  舐めればよけいに、熱く堅くなる。  少年は自分が醜くはないことは知っている。  あの女に似ているからだ。  自分ではみっともないと思ってしまうが、人からの評価はちがうことを。  人はあの女を美しいと言う。  良く似た容貌の妹もそう言われている。  女も妹も男達をとっかえひっかえしている。   見守られない子供が狙われるように、子供の頃からこの身体を撫でたり触れたがる連中は多かった。  舐めたり咥えられたりくらいまではされてきた。  咥えさせられたことだってあった。    今でも有名私学の同級生や上級生にトイレに連れ込まれ身体を撫でられ咥えさせられたりもしている。  抵抗などしない少年を彼らは弄んだ。  言われるがまま、咥え舐めてきた。    「綺麗だ。可愛い」  アイツらはよくそう言う。  咥えた顔が「女よりヤらしい」とアイツらは喜んだ。             

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