130 / 130
外伝 最低な恋2
「ふうん・・・、別に女のケツの穴とそんな変わらんやん」
男は相変わらず最低なことを言っていた。
本当に試しているだけなのだとわかる。
でも、男は優しかった。
病院でみつけてきた沈痛作用のある局所用のジェルを使って優しく解されたし、傷を必要以上に開かないように、本当に優しく少年を膝の上にのせ向かって座ったまま動いた。
挿れる時も、急に入らないように優しく支えてくれたし、本当に心地よく動かしてくれた。
挿入の時にいたんだけれど、今はそうでもない。
「はあっ・・・ふぅ」
小さな控えめな吐息を漏らす。
緩やかな心地よい刺激は甘かった。
男の腰使いも、甘く溶かすようだった。
「声ださんようにな。ここ、壁薄いから」
優しく口を塞がれ、キスする舌はその最低な言動とは裏腹にどうしようもなく優しかった。
口の中を優しく舐められ、舌をからめられる。
切なく舌を吸われて吐息を零した。
こんなキス、されたことがなかった。
少年の背中にの火傷に眉を潜めはしたけれど、優しく撫でただけだった。
急に怖くなって泣いた。
あの化け物に、優しく背中を舐められ、心と身体を傷つけられたことを思い出して。
優しくされて、また、豹変されるのが怖い。
ガチガチに震えた。
男は少年を抱き寄せ、落ち着くまでその身体を撫でた。
優しい手に思わずまた、吐息が零れた。
「・・・でも、お前、可愛いな。オレこんな震えてんの抱いたことないわ」
男は真顔で言った。
思わず中でしめつけてしまった。
男が下品に笑った。
「ええやん。お前、ええ穴やん」
男は優しく、でもいやらしく再び動き出した。
喘ぐ。
「優しくせんとって・・・」
少年は泣いた。
壊して欲しいのに。
男が不思議そうに少年を見た。
「優しくされてあまやかされて気持ちよかったら良くないか?」
男は甘やかすように頬を撫でながら言う。
頬にキスされた。
首筋や肩にも。
その甘さが怖くては首を振る。
いやいやする子供みたいな仕草を男は目を細めて見つめていた。
「いらん・・・後で酷されたら悲しいやん。なんもいらん」
少年は素直に答える。
何故か中で男が大きくなった。
「なんか、キたで。お前ええわ」
男は堪えるように言う。
激しく動きたいのを我慢しているのだと少年はわかる。
「ええで?好きにして」
優しく気持ち良くされるより、もう壊されてしまいたかった。
「いや・・・無茶せん約束や。オレは約束は守る男や」
男は言った。
堪えながら。
少年は微笑んだ。
約束してもらったことさえなかったから。
「お前・・・ホンマに可愛いな・・・そう思たら穴の具合もなんかええ。穴なんて誰でもそんな変わりないおもてたのにな」
男は真剣に言った。
男はちゃんとコンドームも使ってくれていた。
さすがに、緩やかな刺激では中だけではイケなかった少年を手でイカせてもくれた。
ちゃんと傷の処置して、身体を拭いて、少年が寝るまでベットの横の椅子に座っていてくれた。
酷いことをされた後だったのに。
何故か眠れた。
男が自分にしたこと、それは何故だか酷いことだとは思わなかった。
悪夢も見ずに。
「コイツ、持って帰ろ」
そう言う声が聞こえた気がした。
目がさめたら男はいないだろう。
また養父のところにかえらなければならないのだろう。
でも、決めてた。
死のう。
逃げようとして何度となくさらに痛めつけられた。
でも、今度は死んででも逃げてやる。
壊れて何も感じなくなるよりはそれがいい。
男が自分にくれたものが優しさだったのかもわからない。
でも、まだ何かを自分は感じられるのだ。
それだけは手放したくなかった。
あの男。
最低で。
でも、なんか面白かった。
夢の中で少年は笑った。
「笑ったら可愛い」
誰かの声が聞こえた気がした。
END
ともだちにシェアしよう!