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Ⅰ 答えは『Yes』しか認めない④

非常にまずい。 まずい事になった。 大失態だ。 取引先のテレビ局で、とんでもない粗相をしてしまった。 (とにかく謝らないと!) 「すみません!クリーニング代は俺がもちます」 どうしよう。返事がない。 「あのっ、当たり前の事を言ってしまいすみません」 なんとか収拾しなければ。 よく考えろ。 ここは取引先だ。 直接関係がある訳ではないが、横の繋がりというものがある。俺のせいで企画が飛んでしまっては皆に迷惑がかかる。この企画は会社の皆、全員で作ってるんだ。 「……『俺のせいで』とかって考えてる?」 「えっ」 なんで分かった? 顔に出ていた? (でも俺は、ずっと頭を下げている) 表情は見えない筈だけど…… 「『なんで分かった?』……って思ったんだろう」 「どうして」 「こういう仕事をしていると、少しの声のトーンの変化で、相手の心理を読み取る事ができる」 「えっ」 顔を上げた瞬間。 首筋を捕らえられた。 「『明里 優斗(あかり ゆうと)』……本名か」 長い指が身分証を引っかけている。 「当たり前でしょう」 身分証を偽造したら犯罪だ。 「あなたの身分証だって偽物じゃないでしょう」 「違いない」 当然だ。 身分を証明する物に偽名を使える訳がない。 彼の身分証の名前だって例外ではない。 『真川 尋(さながわ じん)』 へぇー、役者みたいな名前。 整った顔立ちで品もある。態度は横柄だが、日頃の行いに問題なければ性格は関係ないだろう。 役者でもおかしくない。 (テレビに出てそうだよな) ………………テレビ。 真川 尋。 「さながわ……じん」 真川…… どこかで聞いた事ような…… 「さながわ!」 ……って。 「『特命!Nightジャーナル』!」 あぐあぐ ぱくぱく 声が出てこない。 あぐあぐ ぱくぱく 「局長の真川 尋!!」

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