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Ⅰ 答えは『Yes』しか認めない⑦
独自の視点で政治に鋭いメスを入れる、新進気鋭の若手政治評論家・真川尋。
分かりやすいニュース解説でも定評があり『特命!Nightジャーナル』という冠番組を持つ彼の支持層は広い。
通りで聞いた事のある声だ。
顔だって毎週テレビで見ている。
(どうして気づかなかった?)
今まで。
彼を『彼』だと。
口調も、髪型も、雰囲気も、まるで違っているから。
先入観というやつだ。
でも、それだけじゃない。
(寧ろ偽りもない。飾ろうともしない)
素の彼だから……
誰も知らない素顔と、テレビの中の『彼』が結びつく筈がない。
「君とは初対面なんだが呼び捨てか」
「すみません」
テレビの印象とはだいぶ違う。
真川……さんは、物腰柔らかくて丁寧な口調で知られてるんだけど。
「別に。そうした方が政治家の古狸どもの本音を読み取れるからな」
「また心理を読んだ!」
「違う。君が呟いていた。心の声が駄々漏れだ」
「あっ」
恥ずかしい。
「重ね重ね失礼を申し訳ございません」
「全くだ」
そんな言い方しなくても……
「それで、この上着なんだが」
「責任持って染み抜きします」
「今から取材なんだ。スーツを着なければ仕事ができない」
「そうなんですか」
「 君は、私が夜のニュースを読んでいるだけの仕事をしているとでも思っているのか」
「すみません」
「別に謝らなくていい。実際、誰かに取材させて、然 も自分が足を運び、見て聞いて考えたように喋る奴もいる」
「真川……さんは真面目なんですね」
「悪いか」
「悪くありません!ただ態度が横柄で、自分からぶつかってきたのに謝りもしないから」
「それが君の本音か」
「あっ!」
俺はなんて事を口にしてしまったんだァッ!
相手は天下のジャーナリスト
「真川 尋にィィィ~!!」
「また呼び捨てた」
「すみませんっ」
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