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Ⅰ 答えは『Yes』しか認めない⑧
「君は面白いな。普通は、俺がテレビ用の柔和な口調で話すと相手はポロリと本音を漏らすんだが。日常の俺で本音を漏らした」
「ですから、すみません。失礼をお詫びします」
「謝罪の必要はない。実際、先にぶつかったのは俺だが、謝っていないのも事実だ」
「そうですよね」
「謝ってほしいのか」
「謝罪は必要ないです。寧ろ謝らなければならないのは、俺の方です」
「なぜ、そう思う?」
「コーヒーをこぼしたのは、俺だから」
お辞儀して、コーヒーをスーツにぶちまけてしまった。
「悪い事をしたら謝らないと。なのでスーツは弁償させて下さい」
「その必要はない」
「ですが」
「替えのスーツは持っている。こうしたアクシデントに備えるのは常識だ」
………………えっ。
持ってるの?スーツ★
「悪いか」
「悪くないです」
だけど……
「どうして教えてくれなかったんですか。俺、本気で心配しました。俺のせいで仕事できなくなったら、どうしようって」
「それは本音か」
「嘘言って、どうするんですか」
「それもそうだ。では、そういう事だから」
俺は、これで。
そう言って立ち去る。……と、てっきり思っていた。
真川 尋は。
「君の言葉が真実か確かめさせてもらうぞ」
どういうこと!?!?
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