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Ⅲ これは恋なんかじゃない!④
つんつん
「ここ」
つんつん
「眉間に皺が寄っている」
つんつん
こつこつ
「面白い顔」
「なっ」
『変な顔』の次は『面白い顔』と言われた★
俺はΩだからαみたいに容姿端麗、眉目秀麗じゃない。ごくごく普通だ。
でも。だからって、面白いはひどい。
「俺は必死で」
あなたを待っていたのに。
……言葉の途中で途切れた気持ちは、最後まで伝えられなかった。
言葉を引き出す喉が苦しい。
とんとん
つんつん
少し冷たい指先が、まだ俺の額を突っついてくる。
「やめて下さい」
「あぁ、すまない」
「俺を振り回して面白いですか」
「いや。全然、面白くない」
呆気なく指先が離れて、宵闇の目が夜気をはらんだ視線で見下ろす。
「君の顔が面白いと言ったんだ」
なんなんだ。この人は!
「失礼ですね」
「なにがだ?」
「はっ?」
自覚がないのか?
それとも、ほんとうに理解してない?
天然だって、許せる事と許せない事がある。
「『顔が面白い』って失礼でしょう」
「あぁ~」
なに?
なに、その反応。
(謝る気、全くないだろ)
どこまで横柄で不遜なんだ。
真川 尋!!
(呼び捨ててやる。こんな人……また怒られるから心の中で)
「悪かったですね!面白い顔で!」
俺は怒っている。
「どうせ俺は面白い顔です」
「認めるのか」
「認めたくないです」
「じゃあ、どうしてそんなことを言うんだ」
「あなたがっ」
最初に言い出したんだろう。
それを棚に上げて~
自分は第三者ですか。
そ知らぬ振りですか。
「一体、誰のせいで」
こつん
額が暖かい。
(目、瞑るの忘れた……)
……うぅん。
キスじゃない。
温もりは、真川さんの体温だ。
俺の額と、真川さんの額。
「俺のせいだな」
おでことおでこが、ごっつんこしてる。
「悪かった。変な顔にさせて」
「……また……言った」
「なに?聞こえない」
「いちいち聞かなくていいです」
「では俺が一方的に話す」
両方の頬っぺたが暖かい。
大きな手の温もりが頬を包んでいる。
自分でも熱いのが分かる。
頬の熱だけが上昇する。
真川さん、一方的に話すと言ったのに。
「あのっ」
なにも話してくれないのは、どうしてだろう。
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