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Ⅳ 俺はあなたを呼び捨てない④

「君の拒む理由が全く分からない」 「俺だって」 あなたが。 「俺にこだわる理由が分かりません」 「これでは堂々巡りだな」 『番』になるか、ならないか。 話が行き詰まってしまった。 では『番』の話は白紙で……という訳にはいかなさそうだ。 「君は……」 瞳の宵闇が俺を包んだ。 真川さんの目が、真っ直ぐ俺を見つめている。 「既に心に決めた雄が居るのか?」 「オッオッオッ!!」 オオオオオオ!! 「オッオオオーッ!!」 「どうした?」 オーーーーー!! 「オスゥゥゥゥーッ★★★」 神様、仏様。 大いなる誤解です。俺には…… 「おいっ」 俺には…… 「しっかりしろ」 オスなんてェェェェ…… 「おい、俺が分かるか?」 あれ? 体に力が入らない。足の腕の力が抜けていく。 (なんで、俺は倒れないんだ) 冷たい床の上に。 「優斗」 名前、呼ぶ声があたたかい。 体も…… (あぁ、そうか) 「真川さん……」 「そうだよ」 あなたが受け止めてくれたんだ。 俺の体、倒れそうになったところ。 「震えている。すまない」 力ない手があなたの襟元を掴んでいる。 このままじゃ、スーツが。 「離さなくていい」 「でもクシャクシャに……」 「いいと言っている」 「頑固だ」 あなたは…… 「あなたは……」 「頑固だよ。君に雄が居ようとも、俺に惚れさせる」 あたたかい、あなたの温もりは卑怯だ。

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