29 / 217
Ⅳ 俺はあなたを呼び捨てない⑧
俺は悪くない。
絶対に俺は悪くない。
コーヒーを吹き出したのは、あなたが!
(あ……)
スーツ、ものすごい染みになっている……
第一に、俺がコーヒーをぶっかけた。
第二に、俺がコーヒーを吹きこぼした。
第三に、俺が再びコーヒーを吹きこぼしたから。
第一については、俺の不注意である。
だが。
第二と第三については、俺は無実だ。
だって、あなたが。
「悪い事をしたら、なんと言うんだ?」
「ごめんなさい」
なんで謝ってるんだろう……俺……
(俺は悪くない!)
でも、結果としてコーヒーをかけてしまったのは俺が悪い。
(うぅ……うぅっ)
頭の中がモヤモヤする。
「恥ずかしくないから。毎日オナニーしなさい。やり方が分からないなら、俺が教えてあげるから」
うぅ……
大いなる誤解だ。
俺が息を荒くしたのは性的興奮ではなく、怒りだ。
それも、あなたに対する!
(怒り……)
………………って★
「なにやってるんですかァッ」
真川さんの手!
「なにって」
「その手!」
「ジッパーを下ろしているんだが」
「どうしてッ」
念のために言っておく。ここはトイレではない。テレビ局のロビーだ。
「今から君にオナニーのやり方を教えてやるためだが?」
「ナァァァァァーッ!!」
誰か!!
この暴君αを止めてくれぇぇぇーッ♠
ともだちにシェアしよう!