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Ⅴ 《おまけ+》淋しい熱帯夜【前編】

……………… ……………… ウィンクって古くない? 「明里君、なにか言った?」 「なにも言ってません!」 古き良き時代を感じるのは、俺の気のせいだろうか。 「そうか、私の気のせいか……ごめんね」 キラリン★ またウィンクしたァァァッ 「………」 「………」 「………」 「………」 もしかして葛城さん、俺の反応を待っている……とか? って!! なにをどう反応すればいいんだァッ? 古き良き時代のウィンクに~~~ 「………」 「………」 「………」 「………」 見なかった事にしよう。 「………」 「………」 「………」 「………」 沈黙が重い。重すぎるゥゥゥ~ (分かった!) なにか喋る。喋ればいいんだろッ 「葛城さん」 「はい」 「………」 「………」 呼びかけたのは俺だ。 葛城さんは返事をしてくれた。 「………」 「………」 会話が続かない。 「………」 「………」 見つめ合って、俺達はなにをしてるんだァァァー (そうじゃない) 俺のしたい事は、そうじゃないんだァァァー 「わわっ」 琥珀の玲瓏が間近に迫った。 突然、腕を引かれて葛城さんの胸の中に倒れ込んだ。 この人…… こんなにキラキラの王子様だったんだ…… 蜂蜜色の深い瞳が美しくて、トクトク鼓動を奏でている胸板が逞しくて。 今更だけど。 一目見て高級なブランドだと分かるスーツを着こなす出で立ちが堂に入っている。 「葛城、さん……」 「………」 どうして? 今度はなにも返事してくれないんだ? トクトク トクトク 鼓動を打ち鳴らしているのは、俺の左胸の方。 「あのっ」 「静かに」 そっと、あの端正な指の先が俺の唇に触れた。 (なんで、こんな事をするのだろう) 「あのっ」 「しぃー」 開きかけた唇を、人差し指が優しく押さえる。 「ダメだよ、喋っては」 キラリン★ (…………………………え) なんで? なんで、このタイミングでウィンク~~?? 「左目でしてみたよ」 「??」 どういうこと?? 「今までは右目だった」 はぁ~ 言われてみると確かに、今までの二回は右目でウィンク。 さっきは左目でウィンクだった。 「これで君も萌えキュンだね♪」 どういうことォォォォ~~~??

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