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Ⅶ αの瞳には騙されない⑤

ない。 ない、ない、ない。 絶対ない! 葛城さんが、できる上司だからって。 (そんな理由) 絶対罷り通らない。 世界を支配する頂上のαだって。 (電話を自在に操る能力はない) それは能力じゃない。 妖力だ。 「私を疑ってるのかい?」 『疑っています』……とは言えない。 しかし『信じています』……とも言えない。 俺が信じてしまったら、葛城さんは妖怪になってしまう。 うぅっ、一体どうすれば~? 「あの、電話は誰だったんですか」 会話は明らかに、知っている者との口調だった。それも、仲はあまり良くない…… 電話の相手が分かれば、解決の糸口になるかも知れない。 「誰だろう。間違い電話だから分からないよ」 葛城さんがはぐらかす。 「俺に隠し事してますよね」 「おやおや。私は君に疑われてるのかい。悲しいね」 「俺の電話に葛城さんの間違い電話がかかるなんて、どう考えたっておかしいです」 「αの能力だと言ったろう」 「それを言うなら『妖力』です。葛城さんは妖怪です」 「私が……妖怪、か……」 しまったー!! 俺は、なんて事を。 葛城さんは大切な取引先の人だぞ。 「私が……妖怪ねぇ……」 「違います!言葉のあやと言うか、話の流れというか」 「君には私が妖怪に見えるのか……」 「見えません!葛城さんは人間です」 「………」 「人間に見えます」 「………」 葛城さんの機嫌を完全に損ねてしまったー!! 「とにかく、ごめんなさい」 「妖怪……か……」 「人間です。まっとうな人間です。葛城さんはαです」 「どんなαだ?」 「……ステキなα」 「………」 いけない。言葉の選択を誤った。 陳腐な表現じゃ、葛城さんは許してくれない。 「かっこいいα」 「……当然だ」 「素晴らしいα」 「どんなふうに?」 ちょっと食いついた。 「キラキラα」 「もう一声」 「キラキラ王子様α」 「いいぞ。もう少し、がんばってみようか」 「スーパーキラキラ王子様α」 「そこからどうする?」 「超絶スーパーキラキラ王子様α」 「君だけのトッピングを付け加えてくれ」 「俺の超絶スーパーキラキラ王子様α」 「決まりだ。私と付き合おう」 「やった!」 葛城さんのご機嫌が直った♪ ……………… ……………… ……………… なんか、おかしくない? 「君が言ったんだ。私は、君の超絶スーパーキラキラ王子様α……だろう?」 「言ったけど……」 それは、葛城さんが『君だけのトッピング』を付け加えるように言ったから。『俺の』……って言っただけで。 「私達はお付き合いするしかないよ」 えええええぇぇぇぇーッ!!

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