67 / 217
Ⅶ αの瞳には騙されない⑤
ない。
ない、ない、ない。
絶対ない!
葛城さんが、できる上司だからって。
(そんな理由)
絶対罷り通らない。
世界を支配する頂上のαだって。
(電話を自在に操る能力はない)
それは能力じゃない。
妖力だ。
「私を疑ってるのかい?」
『疑っています』……とは言えない。
しかし『信じています』……とも言えない。
俺が信じてしまったら、葛城さんは妖怪になってしまう。
うぅっ、一体どうすれば~?
「あの、電話は誰だったんですか」
会話は明らかに、知っている者との口調だった。それも、仲はあまり良くない……
電話の相手が分かれば、解決の糸口になるかも知れない。
「誰だろう。間違い電話だから分からないよ」
葛城さんがはぐらかす。
「俺に隠し事してますよね」
「おやおや。私は君に疑われてるのかい。悲しいね」
「俺の電話に葛城さんの間違い電話がかかるなんて、どう考えたっておかしいです」
「αの能力だと言ったろう」
「それを言うなら『妖力』です。葛城さんは妖怪です」
「私が……妖怪、か……」
しまったー!!
俺は、なんて事を。
葛城さんは大切な取引先の人だぞ。
「私が……妖怪ねぇ……」
「違います!言葉のあやと言うか、話の流れというか」
「君には私が妖怪に見えるのか……」
「見えません!葛城さんは人間です」
「………」
「人間に見えます」
「………」
葛城さんの機嫌を完全に損ねてしまったー!!
「とにかく、ごめんなさい」
「妖怪……か……」
「人間です。まっとうな人間です。葛城さんはαです」
「どんなαだ?」
「……ステキなα」
「………」
いけない。言葉の選択を誤った。
陳腐な表現じゃ、葛城さんは許してくれない。
「かっこいいα」
「……当然だ」
「素晴らしいα」
「どんなふうに?」
ちょっと食いついた。
「キラキラα」
「もう一声」
「キラキラ王子様α」
「いいぞ。もう少し、がんばってみようか」
「スーパーキラキラ王子様α」
「そこからどうする?」
「超絶スーパーキラキラ王子様α」
「君だけのトッピングを付け加えてくれ」
「俺の超絶スーパーキラキラ王子様α」
「決まりだ。私と付き合おう」
「やった!」
葛城さんのご機嫌が直った♪
………………
………………
………………
なんか、おかしくない?
「君が言ったんだ。私は、君の超絶スーパーキラキラ王子様α……だろう?」
「言ったけど……」
それは、葛城さんが『君だけのトッピング』を付け加えるように言ったから。『俺の』……って言っただけで。
「私達はお付き合いするしかないよ」
えええええぇぇぇぇーッ!!
ともだちにシェアしよう!