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Ⅶ 《おまけ+》お食事中はお静かに【後編】
カリってカリ???
「私のカリが分かるかい?」
「分かりません」
「………………」
「………………」
「私のカリが分かるかい?」
「分かりません」
「………………」
「………………」
「私のカリが」
「葛城さん」
「はい」
いい返事だ。
「『しっかり』の間違いですよね?」
「『カリ』だよ」
「『しっかり』ですよね?」
「『カリ』だ」
「………………」
「………………」
あなたは間違っているぞ。葛城さん。
倒れた人の安否確認は、太古の昔より『しっかり』だと相場が決まっているのだ。
『カリ』ではない。
つーか『カリ』関係ない。
「しっ」
「しっ」
俺の言葉の後に葛城さんが続く。
「か」
「か」
「り」
「り」
そうだ。いいぞ、その調子だ。
「しっかり」
「カリ」
なんで言えなくなるんだァァァーッ
「カレーをおしゃれに言った感じ」
「それは『カリー』」
「………………」
「明里君はカリーが食べたいのかい?今度、三谷君に言っておくよ。銀やの新メニューに加えてもらおう」
「………………」
別に食べたいから言ったんじゃない。
「私のカリからカリーは出ないよ」
「♠♠♠~」
そんなところから出したカリーは食べたくない♠!!
「顔色が良くなったね。安心したよ」
あなたが公衆の面前で恥ずかしい事言うから、顔を赤らめてるの!
葛城さんが、俺を心配してくれている事には違いない。
(でも、なぜ?)
葛城さんは突如、卑猥な言葉を言い出したんだろう。
優しくて思慮深い葛城さんの事。きっと何か、俺には図れない深い意図がある筈だ。
聞いていいかな?
「葛城さんはカリーライスがお好きなんですか」
「特に好物ではないが嫌いじゃないよ」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
そこは好きだと言ってくれ。
「あぁ、ありますよね。急にカリーライスが食べたくなる日。お口がカリーライスになっちゃって~」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
話の展開が強引すぎたか。
「あるね」
良かった。葛城さんが同意してくれた。
「今日はカリーライスの気分ですか?」
「カリの気分だよ」
話が『カリ』に戻ったァァァ~ッ♠
「あの~。今日は俺、ちょっとカリーライスの気分じゃないかなぁ……」
「なにっ?」
しまった!
機嫌を損ねてしまった。
葛城さんは大事な取引先だぞ。
「当然だよ」
「えっ」
なに同意してるんだ?この人……
「Ωの不調はカリーライスじゃ治らない。Ωの好物はカリだ」
「は♠」
「元気のないΩにはカリを食べさせると、たちまち興奮する。太古の昔より、我々αの内々で語り継がれている伝説があるよ!」
どんな伝説だァァァァーッ♠♠♠
怒ってはいけない……
怒っては……
(葛城さんは悪くない)
倒れた俺を心配してくれただけ。
唯一つ。
不運だったのは、葛城さんがα性だった事だ。
αは己が性器に傍若無人の自信を持っている。
「明里君」
「はい……」
「私の性器はカリ高巨根だ」
「ギャアアアアァァァァァー!!」
(あなたの秀麗な顔で)
そんな淫猥な言葉……
(聞きたくなかったァァァーッ♠)
「そこォッ!ほかのお客様のご迷惑ですので、お食事中はお静かに!」
うぅっ、三谷君に怒られちゃったじゃないか。
「あぁ、三谷君。今度、銀やの新メニューに『くびれたっぷり♪カリーライス』を加えておくれ」
「それを言うなら」
「葛城さん」
「「『きのこたっぷり♪カリーライス』だろうがー!」でしょうがー!」
ブシュウゥゥゥゥー!!
俺と三谷君の二連プシューが、葛城さんにクリーンヒットした★
「「湯気だして」寝とれ」寝ててください」
もしかして俺達、息ピッタリ★?
「やったね、三谷君」
三谷君とハイタッチ。
「……3倍してください」
「えっ?」
《おしまい♪》
本編はまだまだつづくよ
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