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Ⅸ《おまけ+》パーフェクトリング【前編】
それは、まさに至高の領域。
世界が認める板取 シェフによる至高の一品。
日本各地、こだわりの契約農家のもと、厳選素材を使用し、板取シェフ監修のもとに生まれた、世界で一番美味しいドーナツ……
それが『パーフェクトリング』だ。
五ツ星帝都ホテルの宿泊者のみが、この最高の一品の享受を受ける。
食べるには、まず世界屈指の最高級ホテルに泊まらなければならない。
ごく稀に少量が市場に流通するが、瞬く間に完売してしまう。
パーフェクトリングは、幻のドーナツなのである。
五ツ星帝都ホテルが誇る世界の食通をもうならせる、至玉のドーナツ。
その名は『パーフェクトリング』
(俺も、食べてみたい!)
でも……
まだ誰もパーフェクトリングに手を出していない。
ドーナツはデザートだ。
ディナーを食べた後だよな……
けれど。
ディナーを食べている間にパーフェクトリングがなくなってしまったら、どうしよう。
幻のドーナツだ。
皆が至高のドーナツを狙っている。
(ううぅ~、周りが全員敵に見える~)
依然、誰もパーフェクトリングに手を出さない。
これは牽制か。
(しかし)
好機ともとらえられる。
今ならパーフェクトリング選びたい放題。
全種類制覇も夢じゃない。
(莓は絶対食べたい!)
だがプレーンは外せない。
最初はプレーンだ。
王道なくしてパーフェクトリングは語れない。
パーフェクトリングが俺を呼んでいる。
でも…………
今、行ったら俺は完璧がっついている人だ……
ううぅぅぅ~
(行けない)
真川さんに意地汚いΩだと思われたくない。
(俺のパーフェクトリング……)
ぐすん。
(あれ?)
ところで、真川さんは?
さっきまで隣にいた筈なのに。
(真川さんがいない)
真川さん、どこ行ったー?
「真川さん」
小さな声であなたの名前を口にした。
声は返らない。
あなたを呼んだ唇が震えた。
どうしよう。
俺、迷子になった……
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