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第10話

 静かな部屋だ。静かすぎてうんざりする。  どうやら俺は入院させられているらしい。  ケガなんてたいしたことねぇのに、大げさだ。  ケツ穴は痛ぇけど。  警察も来た。  でも帰っていった。  医者や看護師はよく来る。  触手の話を聞かれる。  ケンカの話じゃなくて、夢の話を聞かれた。  なにが楽しいんだか。  どうでもいいけど、話してやった。 ***  暇だ。スマホもねぇ。なにもねぇ。  ベッドにずっといる。  動く気もしねぇ。  ケガはもういいはずだ。ケツ穴ももう痛くない。  ……ここへ来てどれくらい経つんだろう。  どうでもいいけど。 ***  え?  親……?  触手が……。  頭が痛い。  医者と話してると気持ち悪くなってきて、吐く。  ゆっくりでいいよ、と医者は言う。  親。俺の親。母親はとっくの昔に死んでいる。  父親は。  ……お父さんも、死んだ。  事故であっけなく死んだ。  だから――俺は自由になれた。 ***

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