3 / 22
第3話
窓から差し込む光に照らされた柚木の姿は儚く見えた。
表情は絶妙な光と影で慈愛に満ちていて、髪は光に透き通るくらい光る亜麻色。まるで、人間の姿を借りた何者かであるように瞬きと共に、消えて去ってしまいそうだった。
この腕さえ折れていなければ、この足さえ動けば陣内は思った。
この気持ちが愛情だとはまだ、確信できない。
ただ、それが何だと言うのだろう。
今、目の前にいる、友人であり、友人以上の男を抱きしめたいと思った。
「何?」
と、柚木は陣内の呼びかけに陣内の手が届く場所まで来てくれる。
「今でも俺のこと、好きか?」
と陣内は優しい声で言った。自分でもその優しさに驚く。
「ジン?」
陣内は折れていない方の手で、柚木の指に触れる。
触れた指は逢坂よりは大きくはなかったが、整っていて僅かに暖かかった。
「うん、高校生の頃から今まで好きだよ」
それは今から4年も前のことで、陣内と柚木はまだ高校生だった。
ともだちにシェアしよう!