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第17話
唯パパが怖い顔で俺を見つめる。
ああ、唯パパも俺に起こったことを知っているんだ。
みんなに迷惑をかけたんだ。
ちゃんと謝らなきゃ。
「あのさ、唯パパ。俺ね」
唯パパが痛いくらいの力で俺を抱きしめる。
「真。怖かったろう?」
「パパ」
「ごめんな。真が辛いときに傍にいられなくて。俺はアルファだから、ヒート中は近づかない方がいいと言われて。ああ、真。本当に何もしてあげられなくてごめんな」
「唯パパ、そんな俺大丈夫だよ。第一俺が悪かったんだ。ヒートにも気付かず、のこのこと学校行ってさ。蔵元にも悪いことしたよ」
「真。お前は何にも悪くないんだよ。さあ、ちょっと辛いだろうけど、起こったことをパパと父さんに話してくれるか?」
「真。無理はしなくていいんだぞ」
振り返ると、父さんが苦い顔でこちらを見ていた。
「ううん。ちゃんと話すよ。迷惑かけたし」
リビングで俺の話を聞いた唯パパは完全に表情を消していた。
「ふうん。じゃあ、その蔵元ってのは、真のことを裁判で訴えるって言って脅した上で、お前を病院にも連れて行かず、どこかに隠れていろと指示したんだな」
「うん。もし俺が訴えられたら父さんたちに迷惑かけるよな。本当にごめん。でも蔵元は穏便にすませるって」
「穏便?何言ってるんだ?裁判でもなんでも起こせばいい。むしろやって欲しいね。そうしたら返り討ちにして、慰謝料として財産全部奪ってやれるのに」
「おい、真の気持ちも考えろ」
父さんが唯パパを睨みつける。
「本気で真を法廷になんて出廷させるわけないだろ。さて、どんな風にけじめをつけさせるべきか」
唯パパが凄みのある表情を見せる。
「絶対に力は使うなよ」
ぼそりと父さんが言う。
「ああ、お前との約束だからな」
唯パパが舌打ちする。
「力って?」
「何でもないよ。それより真、食欲はあるか?大丈夫そうなら昨日できなかった合格パーティーをしないか?」
「いいね。賛成」
声のした方を振り向くと、制服を着た樹が立っていた。
「もちろん、俺も参加していいよね」
「樹。お前、その顔」
俺は樹の顔を指さした。
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