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第25話
「でも、俺、ちゃんとした親になれるか不安なんだ。子供のことも可愛がれるかどうか」
樹がくすりと笑った。
「そんな心配は必要ないと思うけど?俺、真ほど愛情深い奴しらないし」
「そんなことないよ」
樹が俺をあやす様にぽんぽんと背中を叩く。
「だけどもし真の子育てが上手くいかなかったとしても、何一つ気に病むことはないんだ。それも含めて、お前に子供を産むように決断した、俺の責任なんだから」
「そんな風に思えるわけないだろ」
「俺の考える責任をとるっていうのはそういう意味だよ。それに俺も一緒に子育てするから、なんとかやっていけるんじゃないかな。もちろんちゃんと、俺の子供として育てるし」
「樹、お前、何言って」
「ああ。順番、間違えたな。一番初めにこう言いたかったんだ」
樹が俺の両手の指先を持ちあげる。
「真。結婚してください」
「え?」
その時、扉を激しく叩く音がした。
「おい、真。樹も中にいるんだろ?大丈夫なのか?」
唯パパの焦った声が聞こえる。
「うん。平気」
樹が返事をして、立ち上がる。
ベッド残された俺は呆然と樹を見つめた。
「今度、ちゃんと挨拶に来るよ。真をくださいってね」
樹はそう言い残し、微笑むと扉を開けた。
樹が出て行くと同時に唯パパが走ってやってきて、息苦しい程に抱擁された。
「傷つくのは当然だ。どんなに暴れたって、叫んだっていい。だが、なんだって俺達の目の届くところでやってくれ。真が部屋に閉じこもったと聞いて、どれだけ心配したか」
俺を抱きしめる唯パパの眉間には深い皺が刻まれていた。
「ごめん。父さんも、ごめんね」
唯パパの後ろに立っていた父さんが淡く微笑み、頷く。
唯パパと父さんに申し訳ない気持ちになりながら、俺の頭の中のほとんどの部分では先ほどの樹の言葉がぐるぐると回っていた。
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