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第26話
「大切な話があるから、今夜、こっちに来てもいいかって樹から電話があったんだけど」
翌日の朝食の席でそう言われ、俺は紅茶を吹きだしそうになった。
「貴一さんと瑞樹も来るみたいなんだけど。どんな話か聞いてる?」
俺は内心、冷や汗をかきながら俯いた。
「俺はなんとなく予想がつくけどな」
唯パパがそう言い、焼きたてのクロックムッシュを口に放りこむ。
「じゃあ、行ってくる」
唯パパは俺の頭を撫で、父さんにキスすると、リビングから出て行った。
父さんが机の上の食器を片付け始める。
「父さん。俺やるよ。どうせ今日も予定ないし」
俺は高校を卒業できる出席日数をほとんど満たしているため、学校には当分行くつもりはなかった。
「いいから。真は座ってろ。俺も仕事は午後からにしたから」
父さんは最近俺を一人にするのが心配らしく、仕事も休みがちだった。
「俺は大丈夫だから、仕事行きなよ」
「ああ、ちゃんと明日は行くよ。今日は樹の家族も来るっていうから、ケーキでも焼こうかな。樹の好きなガトーショコラにするか
」
そう言いながら父さんはキッチンに入って行く。
「それにしても大切な話って何だろうな?真は聞いているか?」
「いや、俺は」
「そうか。喜美ちゃんは来ないのかな?夕飯はいらないって言われたけど、手土産用にクッキーも焼いておこうかな」
父さんはそう言いながら冷蔵庫の中を覗きこんでいる。
俺は目の前にある紅茶のカップを両手で包んだ。
琥珀色の液体を見つめる。
樹はどういうつもりなんだろう。
大事な話って本当に俺と結婚したいとでも言うつもりかよ。
じっとしていられずに、立ち上がった。
「ご馳走様」
食器を流しに運び手早く洗うと、俺は自室に戻って、机の上のスマホを手に取った。
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