27 / 101

第27話

「樹。昨日の夜、俺に言ったこと冗談だよな?」  メールを送信すると、樹からすぐに電話があった。 「なんで?俺、冗談のつもりないけど」  樹の背後が騒がしい。  どこか外からかけているのだろう。 「本気だって言うのかよ。お前、だって」 「俺の気持ちは昨日伝えたはずだ。とにかく詳しくは今夜、お互いの両親も含めて話そう。ちょっと今忙しいんだ」 「樹。今夜って。おいっ」  電話は一方的に切られた。 「今夜って、あいつマジで言うつもりなのか?」  呆然と呟く。  俺と結婚したいと両親の前で宣言するつもりなんだろうか。  それを想像すると驚くほど俺の胸は高鳴り、頬は赤く染まった。嫌な気持ちは全くわかなかった。むしろ、胸の奥がほっこりと温かくなる。しかし俺の顔はすぐに顰められた。  絨毯の上に寝ころぶと、ゆっくりと自分の腹を撫でる。 「でもそんなの無理だよ」  俺は両手で顔を覆った。  樹が両親と家にやって来たのは19時を過ぎたころだった。  貴一さんも瑞樹さんもいつも通りカジュアルな格好で、樹は高校の制服姿だった。  樹は口を真一文字に結び、俺の方をちらとも見ない。  父さんが全員にお茶と手作りのケーキを配る。  樹は自分の大好きなケーキが目の前にあるにも関わらず、一切手をつけない。 「なんだか大事な話だって言うから、酒じゃない方がいいよな」 「突然すみません。樹が急いで話したいって、俺もまだちゃんと分かってないんですけど」  瑞樹さんが困惑した表情で、樹を見つめる。 「樹」  貴一さんに呼ばれ、樹が顔を上げた。 「俺、真と結婚したいと思ってます。それで今、真の腹で育っている子を一緒に育てたいと思っています。どうか許可してくれませんか。真と子供のこと、俺一生大切にするって誓います」  樹ががばりと頭を下げた。  俺と瑞樹さんと父さんは唖然とした表情を浮かべていたが、他は何故か驚いていなかった。 「樹。本気で言っているのか?」 「はい」  父さんが問いかけると、樹ははっきりと頷いた。

ともだちにシェアしよう!