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第27話
「樹。昨日の夜、俺に言ったこと冗談だよな?」
メールを送信すると、樹からすぐに電話があった。
「なんで?俺、冗談のつもりないけど」
樹の背後が騒がしい。
どこか外からかけているのだろう。
「本気だって言うのかよ。お前、だって」
「俺の気持ちは昨日伝えたはずだ。とにかく詳しくは今夜、お互いの両親も含めて話そう。ちょっと今忙しいんだ」
「樹。今夜って。おいっ」
電話は一方的に切られた。
「今夜って、あいつマジで言うつもりなのか?」
呆然と呟く。
俺と結婚したいと両親の前で宣言するつもりなんだろうか。
それを想像すると驚くほど俺の胸は高鳴り、頬は赤く染まった。嫌な気持ちは全くわかなかった。むしろ、胸の奥がほっこりと温かくなる。しかし俺の顔はすぐに顰められた。
絨毯の上に寝ころぶと、ゆっくりと自分の腹を撫でる。
「でもそんなの無理だよ」
俺は両手で顔を覆った。
樹が両親と家にやって来たのは19時を過ぎたころだった。
貴一さんも瑞樹さんもいつも通りカジュアルな格好で、樹は高校の制服姿だった。
樹は口を真一文字に結び、俺の方をちらとも見ない。
父さんが全員にお茶と手作りのケーキを配る。
樹は自分の大好きなケーキが目の前にあるにも関わらず、一切手をつけない。
「なんだか大事な話だって言うから、酒じゃない方がいいよな」
「突然すみません。樹が急いで話したいって、俺もまだちゃんと分かってないんですけど」
瑞樹さんが困惑した表情で、樹を見つめる。
「樹」
貴一さんに呼ばれ、樹が顔を上げた。
「俺、真と結婚したいと思ってます。それで今、真の腹で育っている子を一緒に育てたいと思っています。どうか許可してくれませんか。真と子供のこと、俺一生大切にするって誓います」
樹ががばりと頭を下げた。
俺と瑞樹さんと父さんは唖然とした表情を浮かべていたが、他は何故か驚いていなかった。
「樹。本気で言っているのか?」
「はい」
父さんが問いかけると、樹ははっきりと頷いた。
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