28 / 101
第28話
「お前が真に執着しているのは気付いていたけど」
父さんがため息をつく。
「樹が本気なら、俺も本音で言わせてもらう。お前、簡単に真に子供を産んで結婚してくれなんて言ってるが、それがどれだけ真やお前の負担になるか分かっているのか?真はせっかく受かった大学を休学しなくちゃいけなくなるし、お前はそこら辺の大学生と同じ様に遊び歩くこともできない。最初は可愛いと思っていた赤ん坊だって、邪魔だと思わないなんて確証はないだろ?」
「俺は生まれてくる子に対して絶対にそんな風に思わない」
「絶対なんて言えるのか?真のお腹の中にいるのはお前の子供じゃないんだぞ」
淡々と事実を告げる父さんの声を聴きながら、俺は俯いた。
「分かってるよっ」
「樹」
熱くなり、怒鳴る樹を窘めるように貴一さんが呼ぶ。
「すみません」
「いや、俺もどうしても真が心配で、きつい言い方になった。でも樹、ちゃんと考えて欲しいんだ。真が産んだ後、やっぱり子供は可愛くありませんでしたって言ったって、もう元には戻せないんだよ」
「和希さん、俺」
「あのさあ」
俺はついきつい声をだした。
「なんで俺の話なのに、俺抜きで話進めてんの?」
俺は我慢できずに立ち上がった。
「そもそも俺、樹と結婚するとか一言もOKしてないんですけど」
皆が俺を見て目を丸くした。
貴一さんが突然吹き出す。
「振られたな。樹」
「うるせえよ」
ぼそりと樹が返す。
「真の言うことももっともだな。これは真と樹の問題なんだから、まずは二人で納得いくまで話し合ったほうがいい。真の部屋でいいか?」
「ありがとう」
俺が頷くと、唯パパが微笑んだ。
「行こう」
俺は樹の手首を握ると上階に連れて行った。
部屋の扉を開け、突き飛ばす様に樹を中に入れた。
しっかりと扉を閉め、俺は腕を組んで仁王立ちした。
ともだちにシェアしよう!