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第28話

「お前が真に執着しているのは気付いていたけど」  父さんがため息をつく。 「樹が本気なら、俺も本音で言わせてもらう。お前、簡単に真に子供を産んで結婚してくれなんて言ってるが、それがどれだけ真やお前の負担になるか分かっているのか?真はせっかく受かった大学を休学しなくちゃいけなくなるし、お前はそこら辺の大学生と同じ様に遊び歩くこともできない。最初は可愛いと思っていた赤ん坊だって、邪魔だと思わないなんて確証はないだろ?」 「俺は生まれてくる子に対して絶対にそんな風に思わない」 「絶対なんて言えるのか?真のお腹の中にいるのはお前の子供じゃないんだぞ」  淡々と事実を告げる父さんの声を聴きながら、俺は俯いた。 「分かってるよっ」 「樹」  熱くなり、怒鳴る樹を窘めるように貴一さんが呼ぶ。 「すみません」 「いや、俺もどうしても真が心配で、きつい言い方になった。でも樹、ちゃんと考えて欲しいんだ。真が産んだ後、やっぱり子供は可愛くありませんでしたって言ったって、もう元には戻せないんだよ」 「和希さん、俺」 「あのさあ」  俺はついきつい声をだした。 「なんで俺の話なのに、俺抜きで話進めてんの?」  俺は我慢できずに立ち上がった。 「そもそも俺、樹と結婚するとか一言もOKしてないんですけど」  皆が俺を見て目を丸くした。  貴一さんが突然吹き出す。 「振られたな。樹」 「うるせえよ」  ぼそりと樹が返す。 「真の言うことももっともだな。これは真と樹の問題なんだから、まずは二人で納得いくまで話し合ったほうがいい。真の部屋でいいか?」 「ありがとう」  俺が頷くと、唯パパが微笑んだ。 「行こう」  俺は樹の手首を握ると上階に連れて行った。  部屋の扉を開け、突き飛ばす様に樹を中に入れた。  しっかりと扉を閉め、俺は腕を組んで仁王立ちした。

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